Category | 機巧童子 風のジード
慌しく息せき切って逃げ込んだ少年の目の前には、先に逃げ込んだジョグがいた。
少年はジョグを見据え、何か言いたがったが相当に息が荒い。
肩を大きく上下させながら、ゼーゼーと呼吸をしている。
まだ、言葉を発することが出来ない。
ジョグは、そんな少年を見上げつつ、嬉しいのか楽しいのか笑っているのか、尻尾を勢いよく大きく振って、少年の周りを飛び跳ねている。
が、少年はぐっとジョグの体を押さえ込み、動かないよう目配せした。
サンドワームの動きが気になる。
サンドワームは森の入り口で動きを止め、中の様子を伺っている。
森の中へは入ってこない。
頭を砂上に上げ、少年とジョグを睨むかのようにじっとしている。
見えているわけではない。
サンドワームには目がない。
その代わり、聴覚と臭覚はするどい。
当然、匂いを探しているのだろうが、森の香りが邪魔して感知できない。
少年とジョグは音を発しないように、じっと堪えるしかなかった。
肩を上下させるぐらい息の上がった少年には、つらかった。
だが、ぐっとこらえるしかない。
その場を離れようと、一歩踏み出しても危ない。
少しの音でさえも出せば、一飲みにされてしまうだろう。
そのまま、ひと時が流れた。
少年とジョグは、音を立てないよう直立姿勢をとっていた。
呼吸は大分落ち着いたようである。
諦めたのか、サンドワームは頭を砂に沈めると、そのままどこかへ行ってしまった。
少年とジョグは、ようやく恐怖から解放された。
少年の呼吸は、充分に整っている。ジョグを見るなり、
「ジョグ、俺を置いて1人で逃げるな」
頭に一発ゲンコツを喰らわしてやった。
ワン!!!
が、ジョグは吠えつつ、少年の傷付いた左腕を軽く咬んでしまった。
「だぁあー!!いてーよ!!!」
少年は痛みで飛び跳ねた。
「バカ、ここはな、ここはな、い・た・い・ん・だ・ぞ~」
左腕をかばうようにして、無意味に息を吹きかけている。
怖かったのは何も少年だけではない。ジョグだって内心怖かった。
自分の身を守るために、逃げる。それのどこが悪い、と言う感じだろうか。
森に入るとそこは別世界。
先ほどの荒野と接しているとは思えない程、環境ががらりと変わる。
巨大な木々が立ち並び、日差しは弱まり心地よい気温ではある。
水が豊富に存在し、水の獲得に苦しむ荒野とは一変する。
地面を見れば、土を覆い隠すほど、コケが敷き詰められたように群生していた。
コケは、少しでも太陽の光を受けると発光する。
さらに、発光したコケの周囲も連鎖的に光りだす。
光ゴケとも呼ばれるこのコケのおかげで、生い茂った森の中でも充分に明るい。
少年とジョグは水浴びをしたかった。
昨日の戦闘でアルマジロンの血を浴びている。
その上、先程までサンドワームに襲われて、体中砂だらけである。
少年とジョグは水溜りを探して歩く。
チチチチチッ、チュンチュン。
徐々に森の中に入っていくと、小鳥らしきさえずりが聞こえてくる。
モンスターが多くいるとは言え、やはり森である。
いろんな生物が存在するようだ。
森に入って、水を見つけることはたやすい。
巨木の下か、あるいはコケの光が強い所と相場は決まっている。
巨木は地下深くまで根を張り、地下水を汲み上げている。
いわゆるポンプの役目を果たしている訳だが、汲み上げるのみならず、浄化して排出していた。
その為、モンスターのいる森なのに水は清らかである。
その清らかな水を嫌って、強いモンスターほど水辺には近づかない。
少年は、巨木の下でコケの光が強いところを探した。
コケの光が水面に映る。
水面に映った光は、さらに周囲のコケを発光させる。
その為、水溜りの大きいほど、その周りは浮き上がったような明るさを描き出す。
「うほー!水だ、水だぁ!!」
水は案外簡単に見つけることが出来た。
くぼ地に水が流れ込み、池をなしていた。
荷物を巨木の下に置き、
「ジョグ、まずはたらふく飲みまくるぞ!!」
水辺に降りた。
久しぶりの大量の水である。
荒野では、水は貴重だったせいもあり、充分に補充することが出来なかった。
それでも珈琲に対する思いは強く、かまわず使っていた面もあるのだが。
「森の水で入れたコーヒーは、最高に美味いんだ」
水筒に水を入れる少年。
もちろん、珈琲のためであろうか。
水は透明度が高く、池の底までのぞき見ることが出来る。
軽く泳ぐに充分な広さと深さがある。
「よぉーし、ひと泳ぎするか」
これだけ豊富な浄化された水があれば、易々とはモンスターも近寄っては来ないだろう。
少年はジョグの四つ足に装備していたカギ爪を取り外し、巨木の下の荷物にめがけて投げた。
「ジョグ、飛び込めぇー」
ザパ~~~~ァン!!
少年の合図ですぐさま飛び込むジョグ。
自らも服を脱ぎ、パンツだけを身に付けた状態になる。
浄化された水とは言え、小物モンスターは水辺に近寄ってくる可能性もある。
もしものことを考え、背には剣を抱え、手にはスカーフを持ち、自らも池にに飛び込んだ。
少年はジョグを見据え、何か言いたがったが相当に息が荒い。
肩を大きく上下させながら、ゼーゼーと呼吸をしている。
まだ、言葉を発することが出来ない。
ジョグは、そんな少年を見上げつつ、嬉しいのか楽しいのか笑っているのか、尻尾を勢いよく大きく振って、少年の周りを飛び跳ねている。
が、少年はぐっとジョグの体を押さえ込み、動かないよう目配せした。
サンドワームの動きが気になる。
サンドワームは森の入り口で動きを止め、中の様子を伺っている。
森の中へは入ってこない。
頭を砂上に上げ、少年とジョグを睨むかのようにじっとしている。
見えているわけではない。
サンドワームには目がない。
その代わり、聴覚と臭覚はするどい。
当然、匂いを探しているのだろうが、森の香りが邪魔して感知できない。
少年とジョグは音を発しないように、じっと堪えるしかなかった。
肩を上下させるぐらい息の上がった少年には、つらかった。
だが、ぐっとこらえるしかない。
その場を離れようと、一歩踏み出しても危ない。
少しの音でさえも出せば、一飲みにされてしまうだろう。
そのまま、ひと時が流れた。
少年とジョグは、音を立てないよう直立姿勢をとっていた。
呼吸は大分落ち着いたようである。
諦めたのか、サンドワームは頭を砂に沈めると、そのままどこかへ行ってしまった。
少年とジョグは、ようやく恐怖から解放された。
少年の呼吸は、充分に整っている。ジョグを見るなり、
「ジョグ、俺を置いて1人で逃げるな」
頭に一発ゲンコツを喰らわしてやった。
ワン!!!
が、ジョグは吠えつつ、少年の傷付いた左腕を軽く咬んでしまった。
「だぁあー!!いてーよ!!!」
少年は痛みで飛び跳ねた。
「バカ、ここはな、ここはな、い・た・い・ん・だ・ぞ~」
左腕をかばうようにして、無意味に息を吹きかけている。
怖かったのは何も少年だけではない。ジョグだって内心怖かった。
自分の身を守るために、逃げる。それのどこが悪い、と言う感じだろうか。
森に入るとそこは別世界。
先ほどの荒野と接しているとは思えない程、環境ががらりと変わる。
巨大な木々が立ち並び、日差しは弱まり心地よい気温ではある。
水が豊富に存在し、水の獲得に苦しむ荒野とは一変する。
地面を見れば、土を覆い隠すほど、コケが敷き詰められたように群生していた。
コケは、少しでも太陽の光を受けると発光する。
さらに、発光したコケの周囲も連鎖的に光りだす。
光ゴケとも呼ばれるこのコケのおかげで、生い茂った森の中でも充分に明るい。
少年とジョグは水浴びをしたかった。
昨日の戦闘でアルマジロンの血を浴びている。
その上、先程までサンドワームに襲われて、体中砂だらけである。
少年とジョグは水溜りを探して歩く。
チチチチチッ、チュンチュン。
徐々に森の中に入っていくと、小鳥らしきさえずりが聞こえてくる。
モンスターが多くいるとは言え、やはり森である。
いろんな生物が存在するようだ。
森に入って、水を見つけることはたやすい。
巨木の下か、あるいはコケの光が強い所と相場は決まっている。
巨木は地下深くまで根を張り、地下水を汲み上げている。
いわゆるポンプの役目を果たしている訳だが、汲み上げるのみならず、浄化して排出していた。
その為、モンスターのいる森なのに水は清らかである。
その清らかな水を嫌って、強いモンスターほど水辺には近づかない。
少年は、巨木の下でコケの光が強いところを探した。
コケの光が水面に映る。
水面に映った光は、さらに周囲のコケを発光させる。
その為、水溜りの大きいほど、その周りは浮き上がったような明るさを描き出す。
「うほー!水だ、水だぁ!!」
水は案外簡単に見つけることが出来た。
くぼ地に水が流れ込み、池をなしていた。
荷物を巨木の下に置き、
「ジョグ、まずはたらふく飲みまくるぞ!!」
水辺に降りた。
久しぶりの大量の水である。
荒野では、水は貴重だったせいもあり、充分に補充することが出来なかった。
それでも珈琲に対する思いは強く、かまわず使っていた面もあるのだが。
「森の水で入れたコーヒーは、最高に美味いんだ」
水筒に水を入れる少年。
もちろん、珈琲のためであろうか。
水は透明度が高く、池の底までのぞき見ることが出来る。
軽く泳ぐに充分な広さと深さがある。
「よぉーし、ひと泳ぎするか」
これだけ豊富な浄化された水があれば、易々とはモンスターも近寄っては来ないだろう。
少年はジョグの四つ足に装備していたカギ爪を取り外し、巨木の下の荷物にめがけて投げた。
「ジョグ、飛び込めぇー」
ザパ~~~~ァン!!
少年の合図ですぐさま飛び込むジョグ。
自らも服を脱ぎ、パンツだけを身に付けた状態になる。
浄化された水とは言え、小物モンスターは水辺に近寄ってくる可能性もある。
もしものことを考え、背には剣を抱え、手にはスカーフを持ち、自らも池にに飛び込んだ。
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太陽が地平線から顔を覗かせていたころ、少年は目を覚ました。
朝から日差しが強く差し込み、今日も気温はかなり上がりそうだ。
近くには森が広がっていて、朝日を浴びた緑が朝露できらきらと光っている。
そよ風が深緑の香りを運んでくる。
少年は伸びをすると、朝の空気をめいっぱい吸い込んだ。
荷物の中からコーヒー豆を取り出し、手頃な石で豆を砕き、沸かした湯でコーヒーを入れる。
男の朝は、一杯のコーヒーで始まる。
ダンディズムに憧れる少年に、モーニングコーヒーは欠かせない。
朝日を眺めながら、小指を立ててコーヒーを味わう。
フッ
朝日に向かって、ニヒルな微笑み。
ちょっと苦いが、これが大人の味だと深く思う少年であった。
ここは荒野に点在する巨大な岩の上。
昨日はアルマジロンとの戦いにより、日中のうちに森を抜けるのが不可能になり、一晩の宿とした。
砂上では寝ているうちに、モンスターの餌食となる可能性が高いのだ。
ジョグはすでに目覚めており、モンスターの気配はないかと岩の下で周囲を散策していた。
ジョグは毎朝、少年の行動を見つつも、何も言わない。
きっと、何も言う気がしないのだろう。
少年は荷物をまとめると、岩の上に立ち上がった。
今日もゴーグルという名の水中眼鏡を、かっこよくセットする。
「いくかっ!」
少年は荷物袋と柳刃包丁を背負い、大岩を滑空するかのように降りていく。
手はマントの裾をつかんで、水平に大きく広げる。
それは翼をイメージするかのように。
飛行機への憧れだろうか。
それとも、少年のたわむれか。
下にたどり着く直前、ジョグの目の前で岩をけってジャンプした。
ジョグからみた少年の姿は、朝日に映し出され輝いていた。
その中で、少年はポーズをきめた。ビシッと凛々しく。
だが、ジョグはあえて何も言わない。何も言えない。
ドスーーーン!!
少年は着地すると同時にポーズをきめた。
着地の衝撃が砂に響く。
「ジョグ、森に入るぞ」
少年は、ゴーグルという名の水中眼鏡をジョグに付けてあげ、並んで森へ向って歩き出した。
その時、後方で1つの砂の盛り上がりが出来た。
それは、ほんのかすかだが臭いがする。
次第に臭いは大きくなってくる。
砂の盛り上がりは、少年が着地した地点に向かって近づいてくるのである。
クンクン
ジョグが危険を察知した。
何か匂う。かすかに臭い。
ジョグは後ろを振り返った。
ザババババーーーーンンンン!!!!!
砂が吹き上がり、サンドワームが出現した。
吠える間もなかった。
それに気付いた少年も、後ろを振り返る。
岩の近くで吹き上がった砂は、少し離れていたいたにも関わらず、少年とジョグの上から土砂降りの如く落ちてきた。
「どゅよわわわ???……!?」
急な状況に、少年は目の前の現実を把握できなかった。
朝っぱらから何てことだ。
サンドワームは、少年が飛び降りた岩の近くで物色しているが、獲物はいない事に気付く。
ドサッ
慌てた少年は、おもわずひっくり返ってしまった。
そのかすかな音を感知したのか、アルマジロンは砂に飛び込むように潜り、急激に近づいてくる。
少年は砂にはいつくばって、手足をバタバタし、もがいていた。
「ジョジョジョジョ……ジョグ!!!!!!」
ジョグがいた箇所に目をやると、そこにジョグはいない。
ジョグは一目散に、森に向かって逃げていた。
「こ、こらーーーーー!!!」
「俺を置いてくなーーーーー!!!!」
自分の叫びで、少年はようやく我に返った。
砂の上で手足をバタバタと、もがきながらも四つん這いになって、ジョグの後を四足で追う。
ジョグの真似をしているのではない。腰を抜かしていたのだ。
後ろからはサンドワームが迫る。
猛烈な速さだ。
少年は四足走行から、ようやく二足走行に立ち直った。
懸命に走る。死に物狂いで走る。
立ち止まったら確実に死ぬ。
森はすぐそこだ。
サンドワームは森の中には入ってこない。
森にさえたどり着ければ。
ザババババーーーーンンンン!!!!!
だが砂が吹き上がり、再びサンドワームは少年のすぐ後ろで顔を出した。
カプッ
飲み込まれそうになるも、ギリギリかわす少年。
またしても吹き上がった砂に覆いかぶされて、身動きが取り難い。
だが、先ほどのような慌て振りはない。
順応性は良いほうだ。
即座に順応出来なければ、この世界いや戦闘においては生き残れない。
少年は落ち着いていた。
だが戦っても勝てる相手ではない。
ただただ、ひたすらに全力で走り続けるしかなかった。
サンドワームにとっては、せっかくの獲物である。逃すわけにはいかない。
大きく口を開けて、砂ごと少年を飲み込もうと挑む。
だが、砂に足を取られつつも、上手くその攻撃をかわしていく。
体力の限界まで力を振り絞り、ようやく森に飛び込むようにして逃げ込んだ。
朝から日差しが強く差し込み、今日も気温はかなり上がりそうだ。
近くには森が広がっていて、朝日を浴びた緑が朝露できらきらと光っている。
そよ風が深緑の香りを運んでくる。
少年は伸びをすると、朝の空気をめいっぱい吸い込んだ。
荷物の中からコーヒー豆を取り出し、手頃な石で豆を砕き、沸かした湯でコーヒーを入れる。
男の朝は、一杯のコーヒーで始まる。
ダンディズムに憧れる少年に、モーニングコーヒーは欠かせない。
朝日を眺めながら、小指を立ててコーヒーを味わう。
フッ
朝日に向かって、ニヒルな微笑み。
ちょっと苦いが、これが大人の味だと深く思う少年であった。
ここは荒野に点在する巨大な岩の上。
昨日はアルマジロンとの戦いにより、日中のうちに森を抜けるのが不可能になり、一晩の宿とした。
砂上では寝ているうちに、モンスターの餌食となる可能性が高いのだ。
ジョグはすでに目覚めており、モンスターの気配はないかと岩の下で周囲を散策していた。
ジョグは毎朝、少年の行動を見つつも、何も言わない。
きっと、何も言う気がしないのだろう。
少年は荷物をまとめると、岩の上に立ち上がった。
今日もゴーグルという名の水中眼鏡を、かっこよくセットする。
「いくかっ!」
少年は荷物袋と柳刃包丁を背負い、大岩を滑空するかのように降りていく。
手はマントの裾をつかんで、水平に大きく広げる。
それは翼をイメージするかのように。
飛行機への憧れだろうか。
それとも、少年のたわむれか。
下にたどり着く直前、ジョグの目の前で岩をけってジャンプした。
ジョグからみた少年の姿は、朝日に映し出され輝いていた。
その中で、少年はポーズをきめた。ビシッと凛々しく。
だが、ジョグはあえて何も言わない。何も言えない。
ドスーーーン!!
少年は着地すると同時にポーズをきめた。
着地の衝撃が砂に響く。
「ジョグ、森に入るぞ」
少年は、ゴーグルという名の水中眼鏡をジョグに付けてあげ、並んで森へ向って歩き出した。
その時、後方で1つの砂の盛り上がりが出来た。
それは、ほんのかすかだが臭いがする。
次第に臭いは大きくなってくる。
砂の盛り上がりは、少年が着地した地点に向かって近づいてくるのである。
クンクン
ジョグが危険を察知した。
何か匂う。かすかに臭い。
ジョグは後ろを振り返った。
ザババババーーーーンンンン!!!!!
砂が吹き上がり、サンドワームが出現した。
吠える間もなかった。
それに気付いた少年も、後ろを振り返る。
岩の近くで吹き上がった砂は、少し離れていたいたにも関わらず、少年とジョグの上から土砂降りの如く落ちてきた。
「どゅよわわわ???……!?」
急な状況に、少年は目の前の現実を把握できなかった。
朝っぱらから何てことだ。
サンドワームは、少年が飛び降りた岩の近くで物色しているが、獲物はいない事に気付く。
ドサッ
慌てた少年は、おもわずひっくり返ってしまった。
そのかすかな音を感知したのか、アルマジロンは砂に飛び込むように潜り、急激に近づいてくる。
少年は砂にはいつくばって、手足をバタバタし、もがいていた。
「ジョジョジョジョ……ジョグ!!!!!!」
ジョグがいた箇所に目をやると、そこにジョグはいない。
ジョグは一目散に、森に向かって逃げていた。
「こ、こらーーーーー!!!」
「俺を置いてくなーーーーー!!!!」
自分の叫びで、少年はようやく我に返った。
砂の上で手足をバタバタと、もがきながらも四つん這いになって、ジョグの後を四足で追う。
ジョグの真似をしているのではない。腰を抜かしていたのだ。
後ろからはサンドワームが迫る。
猛烈な速さだ。
少年は四足走行から、ようやく二足走行に立ち直った。
懸命に走る。死に物狂いで走る。
立ち止まったら確実に死ぬ。
森はすぐそこだ。
サンドワームは森の中には入ってこない。
森にさえたどり着ければ。
ザババババーーーーンンンン!!!!!
だが砂が吹き上がり、再びサンドワームは少年のすぐ後ろで顔を出した。
カプッ
飲み込まれそうになるも、ギリギリかわす少年。
またしても吹き上がった砂に覆いかぶされて、身動きが取り難い。
だが、先ほどのような慌て振りはない。
順応性は良いほうだ。
即座に順応出来なければ、この世界いや戦闘においては生き残れない。
少年は落ち着いていた。
だが戦っても勝てる相手ではない。
ただただ、ひたすらに全力で走り続けるしかなかった。
サンドワームにとっては、せっかくの獲物である。逃すわけにはいかない。
大きく口を開けて、砂ごと少年を飲み込もうと挑む。
だが、砂に足を取られつつも、上手くその攻撃をかわしていく。
体力の限界まで力を振り絞り、ようやく森に飛び込むようにして逃げ込んだ。
世界が崩壊した1000年前、放出されたエネルギー波が植物や動物に生態変化を起こした。
なぜ、エネルギー放出が起きたのか。
いったい、どんなエネルギーなのか。
現在の人類には知る由もない。
人類も生態変化を起こした者もいる。
現在も1000年前の姿で生きている者は、運よくエネルギー波を浴びることなく生き延びた者達の子孫である。
大気も大地も変化した。
文明も滅びたと言ってもよいだろう。
高度文明からいきなり原始時代に戻った感だ。
だが、人間には知恵がある。
知恵と経験を後世に伝えていきながら、人々は力強く生き抜いていた。
太陽が西の空にある。夕日が強くさしている。
この辺りは、地殻変動により地面が隆起していて、大きな岩は山のように高い。
岩は鉄分を含んでいて、夕日に照らされると大地が赤く見える。
岩の上から周りの景色をうかがうと、陰影がはっきりと映し出されて美しい。
少年とジョグはサンドワームから必死で逃げ切り、今はこの大きな岩の上にいた。
この岩は大丈夫、モンスターではない。
台地が隆起してできた大岩である。
少年は、アルマジロンに噛まれた左腕を消毒していた。
モンスターの血が体内に入ると、体質変化を起こしてしまうからだ。
ジョグは、水で薄めた消毒液で口の中を洗浄している。
何度も噛んだので、口の中にアルマジロンの血がここびりついていた。
「今日の寝床は、ここだな」
すぐ目の前に森が広がっているが、夜の森に入るのは危険が大きい。
夜の森はモンスターが多い。
荒野が安全な訳ではないが、森の中よりは良い。
「ジョグ、白犬が赤犬になっちまったな」
アルマジロンとの戦いで、全身血を浴びていた。
もちろん、ヒーローの証だと思っている少年のスカーフも、真っ赤に染まっていた。
「まっ、今日のところは我慢しろ。明日、森に入ったら水浴びさせてやる」
森には豊富な水がある。
だが、森に立ち入る人間は少ない。
荒野より手ごわいモンスターがいる。
屈強なものでなければ、死んでしまう恐れがある。
少年は、荷物袋に投げ込んであったアルマジロンの肉を取り出し、焼き始めた。
大きな岩の上にいる。
香ばしい匂いは上に立ち昇っていくが、下に届くことはない。
モンスターを引き付ける要因はない。
少年は、続いて干し肉作りに取り掛かった。
荷物袋の中には、調味料も入っている。
肉に砂糖と塩をすり込むと、粗挽き黒胡椒をまぶす。
本来なら、完成まで2・3週間はかかる。
だが、この荒野では比較的短時間に仕上げることができる。
なんて、料理に関してはどうでも良い。
今、少年とジョグがいる大岩。
いつも大きい岩が存在しているわけではない。
砂地で夜を明かすときは、出来るだけ硬い砂地を選び、携帯食をほうばる。
にしても、多くの食料を持ち運ぶわけにはいかないので、飲まず食わずの時もある。
今日なんて、ご馳走だ。比較的多くの肉をゲット出来た。
少年とジョグは焼きあがった肉を、ガッツガツとほお張っていた。
腹は十分満たされた。
日が沈むと、気温も急激に落ちる。
少年はジョグを引き寄せ、抱くようにしてマントにくるみ、
「明日にはイザークの村につけるからな」
胸の高鳴りを押さえながら、眠りについた。
なぜ、エネルギー放出が起きたのか。
いったい、どんなエネルギーなのか。
現在の人類には知る由もない。
人類も生態変化を起こした者もいる。
現在も1000年前の姿で生きている者は、運よくエネルギー波を浴びることなく生き延びた者達の子孫である。
大気も大地も変化した。
文明も滅びたと言ってもよいだろう。
高度文明からいきなり原始時代に戻った感だ。
だが、人間には知恵がある。
知恵と経験を後世に伝えていきながら、人々は力強く生き抜いていた。
太陽が西の空にある。夕日が強くさしている。
この辺りは、地殻変動により地面が隆起していて、大きな岩は山のように高い。
岩は鉄分を含んでいて、夕日に照らされると大地が赤く見える。
岩の上から周りの景色をうかがうと、陰影がはっきりと映し出されて美しい。
少年とジョグはサンドワームから必死で逃げ切り、今はこの大きな岩の上にいた。
この岩は大丈夫、モンスターではない。
台地が隆起してできた大岩である。
少年は、アルマジロンに噛まれた左腕を消毒していた。
モンスターの血が体内に入ると、体質変化を起こしてしまうからだ。
ジョグは、水で薄めた消毒液で口の中を洗浄している。
何度も噛んだので、口の中にアルマジロンの血がここびりついていた。
「今日の寝床は、ここだな」
すぐ目の前に森が広がっているが、夜の森に入るのは危険が大きい。
夜の森はモンスターが多い。
荒野が安全な訳ではないが、森の中よりは良い。
「ジョグ、白犬が赤犬になっちまったな」
アルマジロンとの戦いで、全身血を浴びていた。
もちろん、ヒーローの証だと思っている少年のスカーフも、真っ赤に染まっていた。
「まっ、今日のところは我慢しろ。明日、森に入ったら水浴びさせてやる」
森には豊富な水がある。
だが、森に立ち入る人間は少ない。
荒野より手ごわいモンスターがいる。
屈強なものでなければ、死んでしまう恐れがある。
少年は、荷物袋に投げ込んであったアルマジロンの肉を取り出し、焼き始めた。
大きな岩の上にいる。
香ばしい匂いは上に立ち昇っていくが、下に届くことはない。
モンスターを引き付ける要因はない。
少年は、続いて干し肉作りに取り掛かった。
荷物袋の中には、調味料も入っている。
肉に砂糖と塩をすり込むと、粗挽き黒胡椒をまぶす。
本来なら、完成まで2・3週間はかかる。
だが、この荒野では比較的短時間に仕上げることができる。
なんて、料理に関してはどうでも良い。
今、少年とジョグがいる大岩。
いつも大きい岩が存在しているわけではない。
砂地で夜を明かすときは、出来るだけ硬い砂地を選び、携帯食をほうばる。
にしても、多くの食料を持ち運ぶわけにはいかないので、飲まず食わずの時もある。
今日なんて、ご馳走だ。比較的多くの肉をゲット出来た。
少年とジョグは焼きあがった肉を、ガッツガツとほお張っていた。
腹は十分満たされた。
日が沈むと、気温も急激に落ちる。
少年はジョグを引き寄せ、抱くようにしてマントにくるみ、
「明日にはイザークの村につけるからな」
胸の高鳴りを押さえながら、眠りについた。
「ワン ワン ワン」
少年の勝利宣言に答えるかのように、ジョグが走りよってきた。
「よーし、本日の飯、ゲットだぜ!」
「ワン ワン」
モンスターは焼くと食える。
と、言うより焼かないと食えない。
まずいわけではない。
生で食するのはもちろん、煮て食べても体質変化を引き起こしてしまうのである。
尻尾にも鎧上の皮膚がある。
比較的柔らかい部位に、斧でまきを割るがごとく、少年は柳刃包丁を振り下ろした。
今日の晩飯である。
残りは今後のことを考え、干し肉にして保存しておきたい。
少年は、今までモンスターを倒すたびにそうしてきた。
「ジョグ、荷物袋を探して来い」
少年の荷物袋はアルマジロンとの戦いで、遠くに飛ばされている。
どこに飛んだかわからない。ジョグの鼻に頼らざるを得ないのだ。
ジョグは匂いを探りつつ駆け出した。
少年の荷物袋の中には、色んなものが詰め込まれてあった。
干し肉作りに欠かせない塩や粗挽き黒コショウまで。
少年はアルマジロンの尻尾をぶつ切りにし、持ち歩けるだけの肉を用意した。
そうこうする内にジョグが荷物をくわえて戻ってきた。
だいぶ走り回ったのか、息が荒い。
そりゃあ。そうである。
激しい戦いの後に荷物を探して走り回ったのだから。
当然である。
ジョグはすぐさま荷物をはなすと、
「ワン ワン ワン」
少年に向かって吠えた。
「あー悪かったよ、お前じゃないと見つけられないだろ」
「ワン!! ワン!! ワン!!!!!!!!」
ジョグはさらに強く吠えた。
「だから、悪かったての」
ジョグの吠え方は異常であった。
ジョグは周囲を警戒している。うなり声が止まらない。
「どうした、何かいるのか」
少年は周りを見渡した。
かすかに、生ごみのような匂いがする。
「くそっ!」
こちらに向かって、四方から盛り上がった砂が近づいてくる。
ものすごい速度だ。
近づくにつれ、匂いが強くなってきた。
少年はこの状況を心得ている。何度も経験していた。
少年は血相を変え、
「ジョ、ジョグ、逃げるぞ!!」
ぶつ切りにした肉を、荷物袋に投げ込む。
ザババババーーーーンンンン!!!!!
突然、砂が宙に吹き上がった。
強烈な臭いと共に、砂の中から巨大な生物が姿を現したのだ。
ミミズに大きい口をつけたような生物だ。
サンドワームである。
1000年前は小さなミミズだった。
しかし、世界崩壊の際のエネルギー波で、体質変化を起こし巨大化していた。
ミミズは動物界の食物連鎖の中では、最も低い位置にある。
つまり、小鳥や小動物に捕食されるのだ。
が、今では人間やモンスターさえ食らうほどの巨大さである。
今現在、サンドワームは動物界の食物連鎖の中では、最も高い位置にあると言って良い。
ズバババババババーーーーーーンンンンンンン!!!!!!!!!!!!!
4つの砂の盛り上がりから、サンドワームが次々顔を出した。
周囲はかなり臭い。
鼻を押さえて呼吸しても、口から匂いが入り込んでくる感じだ。
体全体から匂いを感じるほど臭いとも言えよう。
気絶しそうである。
サンドワームは体長20メートルの巨体。
20メートルの気性の荒いミミズを想像してほしい。
サンドワームは砂の中で生息していて目がない。
砂上の音や血の匂いを感じ、餌を捕食している。
サンドワームは、5匹でアルマジロンの肉片を取り合っていた。
「くそっ!血にひきつけられたかっ!!」
アルマジロンの血が染み込んだ砂ごと、食らっていくサンドワーム。
砂はサンドワームの腹に飲み込まれるのもあり、宙に舞い散るものあり、体に付着するものもあり。
5匹のサンドワームは自身の体をぶつけ合い、餌を奪い合う。
それは壮絶な戦いとも見て取れる。
だが、5匹の巨大なサンドワームの腹に、アルマジロン1匹では満たされない。
すると今度は、サンドワーム同士での食い合いになった。共食いである。
アルマジロンの血がサンドワームの体に付着していた為だ。
サンドワームには目がない、血の匂いに反応したにすぎない。
空筒砲でさえ巨大なサンドワームを倒すことは出来ない。
気絶させるのも難しい。それが五匹も姿を現している。
4つの空筒砲をフルに使っても、やはり充填が間に合わない。
とても太刀打ちできる状況ではない。
今は逃げるしかない。
「今のうちだ!!! 逃げるぞジョグ!!!!! 来-----い!!!!!」
少年とジョグは、その場から全速力で、鬼のように猛烈に走り去った。
少年とジョグが逃げ去った後、サンドワームの共食いは続く。
そしてその共食いは、さらにサンドワームを呼び寄せ、まるで地獄絵の状態であった。
サンドワームは雑食性で何でも口に入れてしまう。荒野の砂でさえも。
危険な存在ではあるが、その反面上質な糞を出す。
したがって、土壌改良には持って来いの存在だが、なにせ人間には制御できない生物である。
サンドワームの去った後の土地は、栄養度の高い土壌となり、いつしか植物が生え、森へと変わっていく。
しかしそれは、不思議な現象と捉えている。
自然に植物が生えることは、この時代において不可能とされることであるのだ。
少年の勝利宣言に答えるかのように、ジョグが走りよってきた。
「よーし、本日の飯、ゲットだぜ!」
「ワン ワン」
モンスターは焼くと食える。
と、言うより焼かないと食えない。
まずいわけではない。
生で食するのはもちろん、煮て食べても体質変化を引き起こしてしまうのである。
尻尾にも鎧上の皮膚がある。
比較的柔らかい部位に、斧でまきを割るがごとく、少年は柳刃包丁を振り下ろした。
今日の晩飯である。
残りは今後のことを考え、干し肉にして保存しておきたい。
少年は、今までモンスターを倒すたびにそうしてきた。
「ジョグ、荷物袋を探して来い」
少年の荷物袋はアルマジロンとの戦いで、遠くに飛ばされている。
どこに飛んだかわからない。ジョグの鼻に頼らざるを得ないのだ。
ジョグは匂いを探りつつ駆け出した。
少年の荷物袋の中には、色んなものが詰め込まれてあった。
干し肉作りに欠かせない塩や粗挽き黒コショウまで。
少年はアルマジロンの尻尾をぶつ切りにし、持ち歩けるだけの肉を用意した。
そうこうする内にジョグが荷物をくわえて戻ってきた。
だいぶ走り回ったのか、息が荒い。
そりゃあ。そうである。
激しい戦いの後に荷物を探して走り回ったのだから。
当然である。
ジョグはすぐさま荷物をはなすと、
「ワン ワン ワン」
少年に向かって吠えた。
「あー悪かったよ、お前じゃないと見つけられないだろ」
「ワン!! ワン!! ワン!!!!!!!!」
ジョグはさらに強く吠えた。
「だから、悪かったての」
ジョグの吠え方は異常であった。
ジョグは周囲を警戒している。うなり声が止まらない。
「どうした、何かいるのか」
少年は周りを見渡した。
かすかに、生ごみのような匂いがする。
「くそっ!」
こちらに向かって、四方から盛り上がった砂が近づいてくる。
ものすごい速度だ。
近づくにつれ、匂いが強くなってきた。
少年はこの状況を心得ている。何度も経験していた。
少年は血相を変え、
「ジョ、ジョグ、逃げるぞ!!」
ぶつ切りにした肉を、荷物袋に投げ込む。
ザババババーーーーンンンン!!!!!
突然、砂が宙に吹き上がった。
強烈な臭いと共に、砂の中から巨大な生物が姿を現したのだ。
ミミズに大きい口をつけたような生物だ。
サンドワームである。
1000年前は小さなミミズだった。
しかし、世界崩壊の際のエネルギー波で、体質変化を起こし巨大化していた。
ミミズは動物界の食物連鎖の中では、最も低い位置にある。
つまり、小鳥や小動物に捕食されるのだ。
が、今では人間やモンスターさえ食らうほどの巨大さである。
今現在、サンドワームは動物界の食物連鎖の中では、最も高い位置にあると言って良い。
ズバババババババーーーーーーンンンンンンン!!!!!!!!!!!!!
4つの砂の盛り上がりから、サンドワームが次々顔を出した。
周囲はかなり臭い。
鼻を押さえて呼吸しても、口から匂いが入り込んでくる感じだ。
体全体から匂いを感じるほど臭いとも言えよう。
気絶しそうである。
サンドワームは体長20メートルの巨体。
20メートルの気性の荒いミミズを想像してほしい。
サンドワームは砂の中で生息していて目がない。
砂上の音や血の匂いを感じ、餌を捕食している。
サンドワームは、5匹でアルマジロンの肉片を取り合っていた。
「くそっ!血にひきつけられたかっ!!」
アルマジロンの血が染み込んだ砂ごと、食らっていくサンドワーム。
砂はサンドワームの腹に飲み込まれるのもあり、宙に舞い散るものあり、体に付着するものもあり。
5匹のサンドワームは自身の体をぶつけ合い、餌を奪い合う。
それは壮絶な戦いとも見て取れる。
だが、5匹の巨大なサンドワームの腹に、アルマジロン1匹では満たされない。
すると今度は、サンドワーム同士での食い合いになった。共食いである。
アルマジロンの血がサンドワームの体に付着していた為だ。
サンドワームには目がない、血の匂いに反応したにすぎない。
空筒砲でさえ巨大なサンドワームを倒すことは出来ない。
気絶させるのも難しい。それが五匹も姿を現している。
4つの空筒砲をフルに使っても、やはり充填が間に合わない。
とても太刀打ちできる状況ではない。
今は逃げるしかない。
「今のうちだ!!! 逃げるぞジョグ!!!!! 来-----い!!!!!」
少年とジョグは、その場から全速力で、鬼のように猛烈に走り去った。
少年とジョグが逃げ去った後、サンドワームの共食いは続く。
そしてその共食いは、さらにサンドワームを呼び寄せ、まるで地獄絵の状態であった。
サンドワームは雑食性で何でも口に入れてしまう。荒野の砂でさえも。
危険な存在ではあるが、その反面上質な糞を出す。
したがって、土壌改良には持って来いの存在だが、なにせ人間には制御できない生物である。
サンドワームの去った後の土地は、栄養度の高い土壌となり、いつしか植物が生え、森へと変わっていく。
しかしそれは、不思議な現象と捉えている。
自然に植物が生えることは、この時代において不可能とされることであるのだ。
空気弾はアルマジロンの腹をえぐるように、ぐいぐいと食い込んでいく。
抵抗しようと踏ん張るアルマジロン。
しかし空気弾は弱まることはない。
この荒野の焼け付くような暑さが、空気弾を膨張させる要因ともなっている。
血に染まった砂が、空気弾の渦に巻き込まれていった。
空気弾は徐々に膨れ上がり、今ではアルマジロンの背をも超える、巨大な球状になっている。
そして、アルマジロンの体を少しづつ飲み込んでいった。
ついに、アルマジロンの体を完全に飲み込んだ空気弾は、大きな赤い球状になっていた。
その球状の周りは、アルマジロンの流した血で重くなった砂が、周囲に飛び散っていた。
さらにその周りの乾いた砂は宙に舞い上がり、赤い玉となった空気弾を取り囲むように激しく空に舞い上がっていた。
「くそ、どうなってんだ?」
少年は、その様子をまだかまだかと待っている。
と言うのも、目の前の視界は砂により、さえぎられていて何も見えない。
空気弾の中ではアルマジロンが押し戻そうと懸命だ。
が、徐々に大きくなっていく空気弾に、もはや何の抵抗も出来ない。
アルマジロンの体力も限界に達した時、ひざをがくりと落とし、体の力が抜けた。
その時アルマジロンの体は、くの字に曲がり宙に浮かぶ。
と思いきや、巨大な赤い玉となった空気弾とともに、空高く吹き飛んでしまった。
体をぐるぐると回転させながら、悲鳴をあげる暇もない。
というより、すでにこの時、絶命していた。
渦に巻き込まれたアルマジロンの体は、空高く舞い上がり、つぶされ、ねじ切れた。
ジュバーーーーン!!
鈍い音と共に、アルマジロンの体は四方に散ってってしまった。
おびただしい血が、豪雨のように砂地に落ちる。
ズドドドドーン
それを追うように、四散したアルマジロンの体の部位が、それぞれ地面に落下した。
しかし、空中高くにはまだ尻尾だけがぐるぐると舞っていた。
赤い空気弾が空に舞い上がったため、少しの砂嵐を残しつつも、視界はだいぶ戻ってきた。
アルマジロンの四散した姿は、少年にもジョグにもはっきりと確認することができる。
「よっ…しゃあああああ~!!」
少年は腹のそこから、大きな大きな声を出す。力の限りの声で。
だが、空中高くに舞っていたアルマジロンの尻尾は、徐々に落下してきた。
それは次第に大きくなり、少年の頭上にせまって来る。
「ワンワンワンワン!!」
それに気づいたジョグが、空に向かって激しく吠える。
「どぅおわわわわー」
ジョグが吠えた事で、自分の頭上を見上げた少年はあわてて逃げ惑う。
ズドーン
アルマジロンの尻尾が、少年の目の前をかすめて落ちた。
「ぎゅわわわー」
少年はのけぞって後ろに倒れた。
「あっっっぶねぇ~」
地上に落ちたアルマジロンの尻尾はピクピクと動いていた。
が、やがてそれも止まった。
「最後まで抵抗する奴」
せっかくの勝利が台無しになるところだったが、ぎりぎり交わすことができた。
少年は立ち上がり、勝利のポーズをとる。
これは少年のポリーシーである。
ポーズはヒーローの証なのだ。
片足を尻尾に乗せ、柳刃包丁を高々と揚げ、首に巻いたヒーローの証の白いスカーフ。
いやアルマジロンの血で真っ赤に染まってはいたが、風にあおられて揺れている。
「アルマジロン、討ち取ったりー」
堂々と、勝利宣言をした。
抵抗しようと踏ん張るアルマジロン。
しかし空気弾は弱まることはない。
この荒野の焼け付くような暑さが、空気弾を膨張させる要因ともなっている。
血に染まった砂が、空気弾の渦に巻き込まれていった。
空気弾は徐々に膨れ上がり、今ではアルマジロンの背をも超える、巨大な球状になっている。
そして、アルマジロンの体を少しづつ飲み込んでいった。
ついに、アルマジロンの体を完全に飲み込んだ空気弾は、大きな赤い球状になっていた。
その球状の周りは、アルマジロンの流した血で重くなった砂が、周囲に飛び散っていた。
さらにその周りの乾いた砂は宙に舞い上がり、赤い玉となった空気弾を取り囲むように激しく空に舞い上がっていた。
「くそ、どうなってんだ?」
少年は、その様子をまだかまだかと待っている。
と言うのも、目の前の視界は砂により、さえぎられていて何も見えない。
空気弾の中ではアルマジロンが押し戻そうと懸命だ。
が、徐々に大きくなっていく空気弾に、もはや何の抵抗も出来ない。
アルマジロンの体力も限界に達した時、ひざをがくりと落とし、体の力が抜けた。
その時アルマジロンの体は、くの字に曲がり宙に浮かぶ。
と思いきや、巨大な赤い玉となった空気弾とともに、空高く吹き飛んでしまった。
体をぐるぐると回転させながら、悲鳴をあげる暇もない。
というより、すでにこの時、絶命していた。
渦に巻き込まれたアルマジロンの体は、空高く舞い上がり、つぶされ、ねじ切れた。
ジュバーーーーン!!
鈍い音と共に、アルマジロンの体は四方に散ってってしまった。
おびただしい血が、豪雨のように砂地に落ちる。
ズドドドドーン
それを追うように、四散したアルマジロンの体の部位が、それぞれ地面に落下した。
しかし、空中高くにはまだ尻尾だけがぐるぐると舞っていた。
赤い空気弾が空に舞い上がったため、少しの砂嵐を残しつつも、視界はだいぶ戻ってきた。
アルマジロンの四散した姿は、少年にもジョグにもはっきりと確認することができる。
「よっ…しゃあああああ~!!」
少年は腹のそこから、大きな大きな声を出す。力の限りの声で。
だが、空中高くに舞っていたアルマジロンの尻尾は、徐々に落下してきた。
それは次第に大きくなり、少年の頭上にせまって来る。
「ワンワンワンワン!!」
それに気づいたジョグが、空に向かって激しく吠える。
「どぅおわわわわー」
ジョグが吠えた事で、自分の頭上を見上げた少年はあわてて逃げ惑う。
ズドーン
アルマジロンの尻尾が、少年の目の前をかすめて落ちた。
「ぎゅわわわー」
少年はのけぞって後ろに倒れた。
「あっっっぶねぇ~」
地上に落ちたアルマジロンの尻尾はピクピクと動いていた。
が、やがてそれも止まった。
「最後まで抵抗する奴」
せっかくの勝利が台無しになるところだったが、ぎりぎり交わすことができた。
少年は立ち上がり、勝利のポーズをとる。
これは少年のポリーシーである。
ポーズはヒーローの証なのだ。
片足を尻尾に乗せ、柳刃包丁を高々と揚げ、首に巻いたヒーローの証の白いスカーフ。
いやアルマジロンの血で真っ赤に染まってはいたが、風にあおられて揺れている。
「アルマジロン、討ち取ったりー」
堂々と、勝利宣言をした。
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