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機巧童子 第2話 森を駆け抜けろ! 010 清らかな水

慌しく息せき切って逃げ込んだ少年の目の前には、先に逃げ込んだジョグがいた。
少年はジョグを見据え、何か言いたがったが相当に息が荒い。
肩を大きく上下させながら、ゼーゼーと呼吸をしている。
まだ、言葉を発することが出来ない。
ジョグは、そんな少年を見上げつつ、嬉しいのか楽しいのか笑っているのか、尻尾を勢いよく大きく振って、少年の周りを飛び跳ねている。
が、少年はぐっとジョグの体を押さえ込み、動かないよう目配せした。
サンドワームの動きが気になる。
サンドワームは森の入り口で動きを止め、中の様子を伺っている。
森の中へは入ってこない。
頭を砂上に上げ、少年とジョグを睨むかのようにじっとしている。
見えているわけではない。
サンドワームには目がない。
その代わり、聴覚と臭覚はするどい。
当然、匂いを探しているのだろうが、森の香りが邪魔して感知できない。
少年とジョグは音を発しないように、じっと堪えるしかなかった。
肩を上下させるぐらい息の上がった少年には、つらかった。
だが、ぐっとこらえるしかない。
その場を離れようと、一歩踏み出しても危ない。
少しの音でさえも出せば、一飲みにされてしまうだろう。
そのまま、ひと時が流れた。
少年とジョグは、音を立てないよう直立姿勢をとっていた。
呼吸は大分落ち着いたようである。
諦めたのか、サンドワームは頭を砂に沈めると、そのままどこかへ行ってしまった。
少年とジョグは、ようやく恐怖から解放された。
少年の呼吸は、充分に整っている。ジョグを見るなり、

「ジョグ、俺を置いて1人で逃げるな」

頭に一発ゲンコツを喰らわしてやった。

ワン!!!

が、ジョグは吠えつつ、少年の傷付いた左腕を軽く咬んでしまった。

「だぁあー!!いてーよ!!!」

少年は痛みで飛び跳ねた。

「バカ、ここはな、ここはな、い・た・い・ん・だ・ぞ~」

左腕をかばうようにして、無意味に息を吹きかけている。
怖かったのは何も少年だけではない。ジョグだって内心怖かった。
自分の身を守るために、逃げる。それのどこが悪い、と言う感じだろうか。
森に入るとそこは別世界。
先ほどの荒野と接しているとは思えない程、環境ががらりと変わる。
巨大な木々が立ち並び、日差しは弱まり心地よい気温ではある。
水が豊富に存在し、水の獲得に苦しむ荒野とは一変する。
地面を見れば、土を覆い隠すほど、コケが敷き詰められたように群生していた。
コケは、少しでも太陽の光を受けると発光する。
さらに、発光したコケの周囲も連鎖的に光りだす。
光ゴケとも呼ばれるこのコケのおかげで、生い茂った森の中でも充分に明るい。
少年とジョグは水浴びをしたかった。
昨日の戦闘でアルマジロンの血を浴びている。
その上、先程までサンドワームに襲われて、体中砂だらけである。
少年とジョグは水溜りを探して歩く。

チチチチチッ、チュンチュン。

徐々に森の中に入っていくと、小鳥らしきさえずりが聞こえてくる。
モンスターが多くいるとは言え、やはり森である。
いろんな生物が存在するようだ。
森に入って、水を見つけることはたやすい。
巨木の下か、あるいはコケの光が強い所と相場は決まっている。
巨木は地下深くまで根を張り、地下水を汲み上げている。
いわゆるポンプの役目を果たしている訳だが、汲み上げるのみならず、浄化して排出していた。
その為、モンスターのいる森なのに水は清らかである。
その清らかな水を嫌って、強いモンスターほど水辺には近づかない。
少年は、巨木の下でコケの光が強いところを探した。
コケの光が水面に映る。
水面に映った光は、さらに周囲のコケを発光させる。
その為、水溜りの大きいほど、その周りは浮き上がったような明るさを描き出す。

「うほー!水だ、水だぁ!!」

水は案外簡単に見つけることが出来た。
くぼ地に水が流れ込み、池をなしていた。
荷物を巨木の下に置き、

「ジョグ、まずはたらふく飲みまくるぞ!!」

水辺に降りた。
久しぶりの大量の水である。
荒野では、水は貴重だったせいもあり、充分に補充することが出来なかった。
それでも珈琲に対する思いは強く、かまわず使っていた面もあるのだが。

「森の水で入れたコーヒーは、最高に美味いんだ」

水筒に水を入れる少年。
もちろん、珈琲のためであろうか。
水は透明度が高く、池の底までのぞき見ることが出来る。
軽く泳ぐに充分な広さと深さがある。

「よぉーし、ひと泳ぎするか」

これだけ豊富な浄化された水があれば、易々とはモンスターも近寄っては来ないだろう。
少年はジョグの四つ足に装備していたカギ爪を取り外し、巨木の下の荷物にめがけて投げた。

「ジョグ、飛び込めぇー」

ザパ~~~~ァン!!

少年の合図ですぐさま飛び込むジョグ。
自らも服を脱ぎ、パンツだけを身に付けた状態になる。
浄化された水とは言え、小物モンスターは水辺に近寄ってくる可能性もある。
もしものことを考え、背には剣を抱え、手にはスカーフを持ち、自らも池にに飛び込んだ。
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機巧童子 第2話 森を駆け抜けろ! 009 モーニングコーヒー

太陽が地平線から顔を覗かせていたころ、少年は目を覚ました。
朝から日差しが強く差し込み、今日も気温はかなり上がりそうだ。
近くには森が広がっていて、朝日を浴びた緑が朝露できらきらと光っている。
そよ風が深緑の香りを運んでくる。
少年は伸びをすると、朝の空気をめいっぱい吸い込んだ。
荷物の中からコーヒー豆を取り出し、手頃な石で豆を砕き、沸かした湯でコーヒーを入れる。
男の朝は、一杯のコーヒーで始まる。
ダンディズムに憧れる少年に、モーニングコーヒーは欠かせない。
朝日を眺めながら、小指を立ててコーヒーを味わう。

フッ

朝日に向かって、ニヒルな微笑み。
ちょっと苦いが、これが大人の味だと深く思う少年であった。
ここは荒野に点在する巨大な岩の上。
昨日はアルマジロンとの戦いにより、日中のうちに森を抜けるのが不可能になり、一晩の宿とした。
砂上では寝ているうちに、モンスターの餌食となる可能性が高いのだ。
ジョグはすでに目覚めており、モンスターの気配はないかと岩の下で周囲を散策していた。
ジョグは毎朝、少年の行動を見つつも、何も言わない。
きっと、何も言う気がしないのだろう。
少年は荷物をまとめると、岩の上に立ち上がった。
今日もゴーグルという名の水中眼鏡を、かっこよくセットする。

「いくかっ!」

少年は荷物袋と柳刃包丁を背負い、大岩を滑空するかのように降りていく。
手はマントの裾をつかんで、水平に大きく広げる。
それは翼をイメージするかのように。
飛行機への憧れだろうか。
それとも、少年のたわむれか。
下にたどり着く直前、ジョグの目の前で岩をけってジャンプした。
ジョグからみた少年の姿は、朝日に映し出され輝いていた。
その中で、少年はポーズをきめた。ビシッと凛々しく。
だが、ジョグはあえて何も言わない。何も言えない。

ドスーーーン!!

少年は着地すると同時にポーズをきめた。
着地の衝撃が砂に響く。

「ジョグ、森に入るぞ」

少年は、ゴーグルという名の水中眼鏡をジョグに付けてあげ、並んで森へ向って歩き出した。
その時、後方で1つの砂の盛り上がりが出来た。
それは、ほんのかすかだが臭いがする。
次第に臭いは大きくなってくる。
砂の盛り上がりは、少年が着地した地点に向かって近づいてくるのである。

クンクン

ジョグが危険を察知した。
何か匂う。かすかに臭い。
ジョグは後ろを振り返った。

ザババババーーーーンンンン!!!!!

砂が吹き上がり、サンドワームが出現した。
吠える間もなかった。
それに気付いた少年も、後ろを振り返る。
岩の近くで吹き上がった砂は、少し離れていたいたにも関わらず、少年とジョグの上から土砂降りの如く落ちてきた。

「どゅよわわわ???……!?」

急な状況に、少年は目の前の現実を把握できなかった。
朝っぱらから何てことだ。
サンドワームは、少年が飛び降りた岩の近くで物色しているが、獲物はいない事に気付く。

ドサッ

慌てた少年は、おもわずひっくり返ってしまった。
そのかすかな音を感知したのか、アルマジロンは砂に飛び込むように潜り、急激に近づいてくる。
少年は砂にはいつくばって、手足をバタバタし、もがいていた。

「ジョジョジョジョ……ジョグ!!!!!!」

ジョグがいた箇所に目をやると、そこにジョグはいない。
ジョグは一目散に、森に向かって逃げていた。

「こ、こらーーーーー!!!」

「俺を置いてくなーーーーー!!!!」

自分の叫びで、少年はようやく我に返った。
砂の上で手足をバタバタと、もがきながらも四つん這いになって、ジョグの後を四足で追う。
ジョグの真似をしているのではない。腰を抜かしていたのだ。
後ろからはサンドワームが迫る。
猛烈な速さだ。
少年は四足走行から、ようやく二足走行に立ち直った。
懸命に走る。死に物狂いで走る。
立ち止まったら確実に死ぬ。
森はすぐそこだ。
サンドワームは森の中には入ってこない。
森にさえたどり着ければ。

ザババババーーーーンンンン!!!!!

だが砂が吹き上がり、再びサンドワームは少年のすぐ後ろで顔を出した。

カプッ

飲み込まれそうになるも、ギリギリかわす少年。
またしても吹き上がった砂に覆いかぶされて、身動きが取り難い。
だが、先ほどのような慌て振りはない。
順応性は良いほうだ。
即座に順応出来なければ、この世界いや戦闘においては生き残れない。
少年は落ち着いていた。
だが戦っても勝てる相手ではない。
ただただ、ひたすらに全力で走り続けるしかなかった。
サンドワームにとっては、せっかくの獲物である。逃すわけにはいかない。
大きく口を開けて、砂ごと少年を飲み込もうと挑む。
だが、砂に足を取られつつも、上手くその攻撃をかわしていく。
体力の限界まで力を振り絞り、ようやく森に飛び込むようにして逃げ込んだ。


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