Category | 09 青いライブジェム
からくり童子 風のジード
第9話 青いライブジェム
第9話 青いライブジェム
第62回 森の水
モザーク村の飲料水の確保は、森にある。
巨木から湧き出る水を大量に汲み上げ、巨大なタンクに収容する。それを住民は、飲用しているのである。
モザークは、村といえども400人ほどの大所帯。
既に町といっても良いぐらいの大きさである。常に水の補給を必要としていた。
その為、森に生息するモンスターとの戦闘は、避けられない。
モザークが軍事に特化しているのは、この為である。
モザーク自警団が森に入るときには、20人程度のチームを組み、それを5チーム作る。
左右にそれぞれガード隊一隊、中央に前方先発隊・中央本隊・後方守備隊と三隊を配置し、左・中央・右と距離を離れて、それぞれで突入する。
万が一モンスターに襲われた場合、中央本隊は生き残る可能性があるからである。
中央本隊には、大型トラック程のタンク車両を2台、それぞれ大牛10頭に牽引させている。
中央本隊のリーダーはパースである。
先発隊は、そのタンク車両が通れる程の道を確保して進む事と、モンスターの襲撃の際には、これを左右に分散させるのが目的。グレープとコンバ(ノーグの甥っ子)は、この隊にいた。
左右ガード隊はモンスターの襲撃を打ち払い、中央本隊を守ることが使命。
後方守備隊は、後方からの襲撃を阻止するのが目的である。
その日も森に入るなり、モンスターは襲ってきた。
メガネザルの体質変化体で、カタナが人間の子と見間違えたグラスモンキー、グラモンである。
森の中央に入るほど、大きく凶暴なモンスターがいる。
したがって、森の入口付近となると弱いモンスターである。が、その分数が多く、モザーク自警団にしてみれば、姑息な手段で襲ってくる厄介な奴らである。
グラモンは高い木の枝にいた。ウニのようなトゲトゲした実を投げつけてくる。
これは、厄介な戦法である。手出ししにくい上に、当たれば、かなり痛い。
弱いモンスターといえども、その戦い方によっては脅威となる。
タンクを牽引している大牛を守るかのように、自警団はガードした。
大牛に当たって暴れでもしたら、手に負えないからである。
自警団の中には、木に登って討ち果たそうとする者もいるが、そこはグラモン、元が猿だけに木々の枝々を飛び渡るのは分けない。
自警団は弓を構え、次々と放つ。打ち落とされるグラモンもいるが、大半は移動しながら矢を避ける。
地上にいないモンスターとの戦いは、苦戦を強いられる。
グラモンの投げたトゲトゲの実が、タンクを牽引している大牛に当たった。
グァモー。叫びを上げて、暴れだす大牛。それは、他の大牛へと連鎖して行き、とてつもない雄たけびに代わっていった。
屈強の自警団とは言え、10頭もの大牛を押さえつけることは容易な事ではなかった。
落ち着かせる為に、香を焚いたり餌を散らしたりしても、なかなか大人しくならない。
しかし、その間グラモンの攻撃はなくなっていた。木々の上からも、姿を消している。
大牛の雄たけびに驚き、一目散に逃げていたのである。
モンスターにしてみれば、自分達のテリトリーを守るためである。
したがって人間は、自分達のテリトリーに侵入してくる敵、もしくは森を破壊する者でしかない。
実際モザーク自警団は、森の水を確保するために、森の木々を切り倒しながら進む。
巨大なタンクを通すだけの道幅を必要としていたからである。
先発隊は、大きい池を目指しながら進んでいく。大きい池は、常に同じ所にあるとは限らない。
池は日数経過により、大きくもなり小さくもなる。巨木から湧き出る水の量は一定ではないからである。
その為、森の地形は変化しており、少人数で森に入ると、たちまちの内に迷ってしまう。
さらに、グラモンなどの小動物に撹乱されて、いつしかモンスターの餌食になってしまう。
カタナとジョグが森を抜けられたのは、単に運が良かったという事である。
森を奥へ奥へと進んでいくと、目の前から羽を広げて無数の魚が飛んでくる。
それは集団であり、黒い大きな塊が飛んでくるかのようにも思えた。
空中を飛ぶ魚。そう、トビマグロである。
もちろん、マグロの体質変化体であり、ひれがトンボの羽のように大きく左右に広がっていた。
ただ、それだけだ。
トビマグロは自ら人間に害をなす行為はしない。
が、高速で森を駆け抜けるこの集団に激突されようもんなら、一発でこの世とお別れになってしまう。
害を成さないが、危険なモンスターである。
このトビマグロは、食すると大変美味であると言う。
捕獲しようとトビマグロに斬りかかった者がいる。
先頭の一匹を切り落として捕獲したのだが、後続のトビマグロが次々にその者めがけて突撃してきた。
一匹を傷つけられたら、集団で襲い掛かって来るのである。なかなかに捕獲出来ないのである。
しかし、このトビマグロには致命的な弱点がある。
止まると、死ぬのである。
飛びながら酸素の補給を行っているので、止まったら息が出来なくなる為である。
モザーク自警団は、トビマグロの群れを避けた。余計な戦闘は避けるためだ。
中央先発隊は、道を作れそうなところを選びつつも、巨木を探して上を見上げている者もいれば、ヒカリゴケがいっそう輝いている箇所を探す者もいた。
森のヒカリゴケは薄い緑色で光っているのだが、遠くに青白く光っている箇所を見つけた。
森の中で青白く光っている所は、大概にして大きい池である。
しかも青白いとは言え、いつも目にしている光より青みが強い。これはかなり期待出来る。
グレープをはじめとした先発隊は、その強い光のほうへと進んだ。
目の前に広がるのは、青みがかった大きな池であった。
巨大なタンク2台分に収納するに、充分すぎるほどの量である。
その池の中央に、浮き出たかのように球状に光る部分があった。
その球状の光が、池全体を青く輝かせているような気がする。
こういう事は、今までに無いことである。不思議に思ったグレープは、甲冑を脱ぎ捨て池の中央へと泳いでいく。
その水面の下には、青い色をした小さな石が浮いていた。
その石を包み込むようにボール状になって光が輝き、あたりりを青く照らしている。
グレープはその石を手にとり、太陽に透かしてみた。
不思議な縁を感じる、優しい光であった。
(青白い光、フィズが花の種を生み出すときに出る光だのう。とすると、種のライブジェムかもしれん。
まぁ、空筒砲には転用できそうも無いが、発芽の解明には役立ちそうだのう)
「今、それを持っとるのか」
「あぁいや、自宅に置いてある」
「なに、こういう時は話の流れからして、持っとるもんだがな。女の子なら、ネックレスにして首からぶら下げているとか」
「女の子らしくなくて、悪かったな」
パースは、ゼファーとグレープの口論になりそうな気がして、口を挟む。
「その石が何か武器になるのか」
「わからん、この鉱石は白く光っとるだろう。青く光る石は、わしも初めてだからな。何が出来るかはわからん」
ゼファーは考え込んでしまった。しかし、考え込んでも仕方が無い。早く、青白く光石のかけらを調べてみたかった。
「よし、女の子さん。青い石を持ってきてくれ」
「え~っ、往復で4日は掛かるのよ」
ゼファーは、ふんぞり返って答える。
「大丈夫だ。一時で戻ってこれる。わしが作った、機巧艇ホーバー(ホバークラフト)を使えばな」
「ホーバーって?」
「説明すんのは面倒い。カタナ、明日お前も一緒に行け」
「おっ、俺もか?」
「あぁ、機巧装置に触れる良い機会じゃ」
巨木から湧き出る水を大量に汲み上げ、巨大なタンクに収容する。それを住民は、飲用しているのである。
モザークは、村といえども400人ほどの大所帯。
既に町といっても良いぐらいの大きさである。常に水の補給を必要としていた。
その為、森に生息するモンスターとの戦闘は、避けられない。
モザークが軍事に特化しているのは、この為である。
モザーク自警団が森に入るときには、20人程度のチームを組み、それを5チーム作る。
左右にそれぞれガード隊一隊、中央に前方先発隊・中央本隊・後方守備隊と三隊を配置し、左・中央・右と距離を離れて、それぞれで突入する。
万が一モンスターに襲われた場合、中央本隊は生き残る可能性があるからである。
中央本隊には、大型トラック程のタンク車両を2台、それぞれ大牛10頭に牽引させている。
中央本隊のリーダーはパースである。
先発隊は、そのタンク車両が通れる程の道を確保して進む事と、モンスターの襲撃の際には、これを左右に分散させるのが目的。グレープとコンバ(ノーグの甥っ子)は、この隊にいた。
左右ガード隊はモンスターの襲撃を打ち払い、中央本隊を守ることが使命。
後方守備隊は、後方からの襲撃を阻止するのが目的である。
その日も森に入るなり、モンスターは襲ってきた。
メガネザルの体質変化体で、カタナが人間の子と見間違えたグラスモンキー、グラモンである。
森の中央に入るほど、大きく凶暴なモンスターがいる。
したがって、森の入口付近となると弱いモンスターである。が、その分数が多く、モザーク自警団にしてみれば、姑息な手段で襲ってくる厄介な奴らである。
グラモンは高い木の枝にいた。ウニのようなトゲトゲした実を投げつけてくる。
これは、厄介な戦法である。手出ししにくい上に、当たれば、かなり痛い。
弱いモンスターといえども、その戦い方によっては脅威となる。
タンクを牽引している大牛を守るかのように、自警団はガードした。
大牛に当たって暴れでもしたら、手に負えないからである。
自警団の中には、木に登って討ち果たそうとする者もいるが、そこはグラモン、元が猿だけに木々の枝々を飛び渡るのは分けない。
自警団は弓を構え、次々と放つ。打ち落とされるグラモンもいるが、大半は移動しながら矢を避ける。
地上にいないモンスターとの戦いは、苦戦を強いられる。
グラモンの投げたトゲトゲの実が、タンクを牽引している大牛に当たった。
グァモー。叫びを上げて、暴れだす大牛。それは、他の大牛へと連鎖して行き、とてつもない雄たけびに代わっていった。
屈強の自警団とは言え、10頭もの大牛を押さえつけることは容易な事ではなかった。
落ち着かせる為に、香を焚いたり餌を散らしたりしても、なかなか大人しくならない。
しかし、その間グラモンの攻撃はなくなっていた。木々の上からも、姿を消している。
大牛の雄たけびに驚き、一目散に逃げていたのである。
モンスターにしてみれば、自分達のテリトリーを守るためである。
したがって人間は、自分達のテリトリーに侵入してくる敵、もしくは森を破壊する者でしかない。
実際モザーク自警団は、森の水を確保するために、森の木々を切り倒しながら進む。
巨大なタンクを通すだけの道幅を必要としていたからである。
先発隊は、大きい池を目指しながら進んでいく。大きい池は、常に同じ所にあるとは限らない。
池は日数経過により、大きくもなり小さくもなる。巨木から湧き出る水の量は一定ではないからである。
その為、森の地形は変化しており、少人数で森に入ると、たちまちの内に迷ってしまう。
さらに、グラモンなどの小動物に撹乱されて、いつしかモンスターの餌食になってしまう。
カタナとジョグが森を抜けられたのは、単に運が良かったという事である。
森を奥へ奥へと進んでいくと、目の前から羽を広げて無数の魚が飛んでくる。
それは集団であり、黒い大きな塊が飛んでくるかのようにも思えた。
空中を飛ぶ魚。そう、トビマグロである。
もちろん、マグロの体質変化体であり、ひれがトンボの羽のように大きく左右に広がっていた。
ただ、それだけだ。
トビマグロは自ら人間に害をなす行為はしない。
が、高速で森を駆け抜けるこの集団に激突されようもんなら、一発でこの世とお別れになってしまう。
害を成さないが、危険なモンスターである。
このトビマグロは、食すると大変美味であると言う。
捕獲しようとトビマグロに斬りかかった者がいる。
先頭の一匹を切り落として捕獲したのだが、後続のトビマグロが次々にその者めがけて突撃してきた。
一匹を傷つけられたら、集団で襲い掛かって来るのである。なかなかに捕獲出来ないのである。
しかし、このトビマグロには致命的な弱点がある。
止まると、死ぬのである。
飛びながら酸素の補給を行っているので、止まったら息が出来なくなる為である。
モザーク自警団は、トビマグロの群れを避けた。余計な戦闘は避けるためだ。
中央先発隊は、道を作れそうなところを選びつつも、巨木を探して上を見上げている者もいれば、ヒカリゴケがいっそう輝いている箇所を探す者もいた。
森のヒカリゴケは薄い緑色で光っているのだが、遠くに青白く光っている箇所を見つけた。
森の中で青白く光っている所は、大概にして大きい池である。
しかも青白いとは言え、いつも目にしている光より青みが強い。これはかなり期待出来る。
グレープをはじめとした先発隊は、その強い光のほうへと進んだ。
目の前に広がるのは、青みがかった大きな池であった。
巨大なタンク2台分に収納するに、充分すぎるほどの量である。
その池の中央に、浮き出たかのように球状に光る部分があった。
その球状の光が、池全体を青く輝かせているような気がする。
こういう事は、今までに無いことである。不思議に思ったグレープは、甲冑を脱ぎ捨て池の中央へと泳いでいく。
その水面の下には、青い色をした小さな石が浮いていた。
その石を包み込むようにボール状になって光が輝き、あたりりを青く照らしている。
グレープはその石を手にとり、太陽に透かしてみた。
不思議な縁を感じる、優しい光であった。
(青白い光、フィズが花の種を生み出すときに出る光だのう。とすると、種のライブジェムかもしれん。
まぁ、空筒砲には転用できそうも無いが、発芽の解明には役立ちそうだのう)
「今、それを持っとるのか」
「あぁいや、自宅に置いてある」
「なに、こういう時は話の流れからして、持っとるもんだがな。女の子なら、ネックレスにして首からぶら下げているとか」
「女の子らしくなくて、悪かったな」
パースは、ゼファーとグレープの口論になりそうな気がして、口を挟む。
「その石が何か武器になるのか」
「わからん、この鉱石は白く光っとるだろう。青く光る石は、わしも初めてだからな。何が出来るかはわからん」
ゼファーは考え込んでしまった。しかし、考え込んでも仕方が無い。早く、青白く光石のかけらを調べてみたかった。
「よし、女の子さん。青い石を持ってきてくれ」
「え~っ、往復で4日は掛かるのよ」
ゼファーは、ふんぞり返って答える。
「大丈夫だ。一時で戻ってこれる。わしが作った、機巧艇ホーバー(ホバークラフト)を使えばな」
「ホーバーって?」
「説明すんのは面倒い。カタナ、明日お前も一緒に行け」
「おっ、俺もか?」
「あぁ、機巧装置に触れる良い機会じゃ」
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からくり童子 風のジード
第9話 青いライブジェム
第9話 青いライブジェム
第61回 青い石
フィズリーが秘密の洞窟から帰ってきた。そこには、見知らぬ少年と白い柴犬がいた。
「だれ?」
「こんにちは、お嬢さん。俺は白柴のヘンドリー。ぼけーっと突っ立ってるのが、カタナだ」
カタナより先に、ジョグがフィズリーに声をかけた。
「にわとりさんが、しゃべったぁー!」
フィズリーは面白そうにジョグの鶏冠をなでる。
「にわとりさん、にわとりさん」
これには、カタナが吹き出した。
「ジョグお前、鶏だったのかぁ」
「ちが~う!俺は、犬族の戦士だぞ」
「鶏なのにぃ。俺は犬族の戦士だぞ~」
ジョグの話し方を真似するかのようにカタナは言い、腹を抱えて笑っている。
「ギャー」 ジョグはカタナの尻を噛んだ。悲鳴を上げ、お尻を手で支えるようようにして飛び跳ねるカタナ。
「お嬢さん、俺は鶏じゃない。犬族の戦士、白柴のヘンドリーだ」
「変なトリ?」
カタナはツボにはまってしまったのか、腹を押さえ転げ回って笑っている。
カプッ 「痛てー!」
犬族の戦士、白柴のヘンドリーことジョグは、腹いせにカタナのお尻を再度噛んだ。
「何で、俺ー」
(何をやっとるんじゃ、こいつらは)という思いを胸に秘め、ゼファーはフィズリーに問う。
「フィズリー、ジードの様子はどうじゃった」
「う~ん、まだ目を覚まさないの」
「そうか、ジードに何か起こってるんじゃろうか。それとも、もう目を覚まさないじゃろか」
「そんなこと無いよ。ジードはねぇ、今、夢を見ているの」
「夢?わかるのか」 「わかんないっ。でも、ちゃんと起きるよ」
「そう感じるのか」 「うん」
(やっぱり、からくり童子間で感じるものがあるのかも)と、思うゼファーである。
白柴のヘンドリー事ジョグは、首をかしげながらゼファーに近寄ってきた。
「ジード。ゼファーさんのお坊ちゃんですか?」 「えっ、まぁ、そういう事じゃ」
「ご病気か何かで」 「うん、まあな。ここん所、寝たきりじゃ」
苦しい言い訳をするゼファーである。
「じゃあ、後でお見舞いでもしましょう」
ゼファーに対して、なぜか丁寧である白柴のヘンドリー。丁寧ではあるが、多少ぶっきら棒にも思える。
そこへノーグとハンマが、モザークの3戦士を連れて、やって来た。
「ゼファー、いるか」 「ああ、こっちだ」
5人は、声の聞こえた方へと進む。
「カタナァ、悪さしてるんじゃないだろうねぇ」
入って来るなりカタナを見つけて、即座に言い放つ女戦士グレープ。
「ジョグ、ちゃんと監視していたか」
「あぁ、今ン所大丈夫だ」 「そうか」
「ちなみに、俺はヘンドリーって名前だぜ」 「なっ、しゃべれるのか」
目を白黒むき出して、驚きを隠せないグレープであったが、そこは百戦錬磨の兵。
ノーグやカタナほどの驚きは見せなかった。
「そう、変な鳥さん。変な鳥さんって言うんだよ」
と、ジョグの鶏冠をなでながら、グレープに話しかけるフィズリー。
「変なトリ?」 「ヘンドリーです。お嬢さん」
「まあまあ、良いじゃないか。トリさん」 「トリさん、トリさん」
「良いわけないでしょう。犬族の戦士、白柴のヘンドリーって言う立派な名前があるんですから」
「トリさん、トリさん」 「お嬢ちゃん……あのね」
「まぁ、トリさんは置いといて」 「………」
「ゼファー、紹介するよ。こちらが今回のモザーク自警団のリーダーのパース、娘さんのグレープそして、俺の甥っ子のパース。3人は、からくりの技術に興味があるそうだ」
「そんで、こっちがゼファー。女の子がフィズリーだ 」
「フーン、イメージ通りの人だ。白い髪に白い髭、白衣を着込んだマッドサイエンティストって感じかな」
グレープは心の内を隠さず、堂々と言い切った。以前、ノーグがゼファーのことを評した台詞と同じである。
(わし、この小娘は嫌い)と、内心思うゼファーである。
「ゼファー、からくり人形についてなんだが、あれはモザークには無い代物だからな、興味がある」
「あれは1000年前の装置じゃよ。人間のサポートをするために作られた代物じゃ」
「1000年前か……とてつもない文明だったんだな」
「あぁ、崩壊したがな」
「そんな崩壊した世界のからくりを掘り起こして、大丈夫なのか」
「からくりがどうという事より、それを使う人間のほうに問題があったんじゃろうて」
「からくりは人間が操作せんと、動かんからな」
「からくり人形は、自分の意志で動いているように見えたが」
「あれは基本動作が組み込まれておる。人間の指示で、その動作を選択しているだけじゃ」
「じゃあ、間違った動作を組み込まれていたら、どうなる」
「一応、決まりみたいな物があってな、人間に害をなす行為は組み込まれておらんはずじゃが、そこまで詳しくは、わしも知らん」
「もし、人間に害をなす様な行為が組み込まれておれば、ただ事ではすまんじゃろうな」
「とは言え、イザークの村は発展途上でな、からくり人形をも使わなければ生活が困難になるのじゃ。まだ住人の数も少ないんでな。頼らずにすめば、それはそれで良い事じゃ」
「そうか、モザークは住人の数が多いい、今のやり方で充分潤ってる訳だし、必要ないかも知れんな」
「私は欲しいな。なんか、可愛いじゃない」
「………かわいい?」
パースとゼファーは目を点にしていた。
ゼファーにしてみれば、からくり人形を可愛いと表現されたのは初めてであった。
(ちょっとは、この小娘を好きになっても良いかも)と思うゼファーである。
「ゼファー、さっきはどうやってモンスターを投げ飛ばしたんだ」
鍛冶屋のハンマが声を出した。
「あぁ、あれか。あれはな、これじゃよ」
5人の目の前で、空筒砲を指差しながら答えた。
「これは?」 「空筒砲と言って、圧縮した空気を打ち出す機巧装置じゃよ」
「武器なのか」 「ああ、そうじゃ。わしが作った」
「どうしてこんな物があるなら、前もって教えてくれなかった」
「すまん、忘れてた」 「忘れてたぁー」
「もう30年も前の前に作った装置じゃ。そりゃぁ忘れるわい」
「他にも武器になりそうな、機巧装置はあるのか」 「いや、ここにあるだけじゃ」
「新しく作れるかい。あれは、かなりに戦力になるんだが」
「無理じゃな、こういう石がないと」
ゼファーは5人にライブジェムを見せてやった。
「なんだ、石が光ってるじゃないか」 「そうだ、こういう光る鉱石が必要なんじゃ」
「ちょっと見せて」
グレープがゼファーからライブジェムを受け取る。 窓の外から入る光にかざしながら、鉱石を見る。
「こういうの、私、持ってるわよ。色が違うけどね」
「なんじゃと、持っとるのか」
「あっ、いや、違うかもしれないけど。色違うし」
「どんな色じゃ」
「うすい青よ。青白く光ってるの」
「どこで、手に入れた」
「えっ、えーとね。森よ」
「だれ?」
「こんにちは、お嬢さん。俺は白柴のヘンドリー。ぼけーっと突っ立ってるのが、カタナだ」
カタナより先に、ジョグがフィズリーに声をかけた。
「にわとりさんが、しゃべったぁー!」
フィズリーは面白そうにジョグの鶏冠をなでる。
「にわとりさん、にわとりさん」
これには、カタナが吹き出した。
「ジョグお前、鶏だったのかぁ」
「ちが~う!俺は、犬族の戦士だぞ」
「鶏なのにぃ。俺は犬族の戦士だぞ~」
ジョグの話し方を真似するかのようにカタナは言い、腹を抱えて笑っている。
「ギャー」 ジョグはカタナの尻を噛んだ。悲鳴を上げ、お尻を手で支えるようようにして飛び跳ねるカタナ。
「お嬢さん、俺は鶏じゃない。犬族の戦士、白柴のヘンドリーだ」
「変なトリ?」
カタナはツボにはまってしまったのか、腹を押さえ転げ回って笑っている。
カプッ 「痛てー!」
犬族の戦士、白柴のヘンドリーことジョグは、腹いせにカタナのお尻を再度噛んだ。
「何で、俺ー」
(何をやっとるんじゃ、こいつらは)という思いを胸に秘め、ゼファーはフィズリーに問う。
「フィズリー、ジードの様子はどうじゃった」
「う~ん、まだ目を覚まさないの」
「そうか、ジードに何か起こってるんじゃろうか。それとも、もう目を覚まさないじゃろか」
「そんなこと無いよ。ジードはねぇ、今、夢を見ているの」
「夢?わかるのか」 「わかんないっ。でも、ちゃんと起きるよ」
「そう感じるのか」 「うん」
(やっぱり、からくり童子間で感じるものがあるのかも)と、思うゼファーである。
白柴のヘンドリー事ジョグは、首をかしげながらゼファーに近寄ってきた。
「ジード。ゼファーさんのお坊ちゃんですか?」 「えっ、まぁ、そういう事じゃ」
「ご病気か何かで」 「うん、まあな。ここん所、寝たきりじゃ」
苦しい言い訳をするゼファーである。
「じゃあ、後でお見舞いでもしましょう」
ゼファーに対して、なぜか丁寧である白柴のヘンドリー。丁寧ではあるが、多少ぶっきら棒にも思える。
そこへノーグとハンマが、モザークの3戦士を連れて、やって来た。
「ゼファー、いるか」 「ああ、こっちだ」
5人は、声の聞こえた方へと進む。
「カタナァ、悪さしてるんじゃないだろうねぇ」
入って来るなりカタナを見つけて、即座に言い放つ女戦士グレープ。
「ジョグ、ちゃんと監視していたか」
「あぁ、今ン所大丈夫だ」 「そうか」
「ちなみに、俺はヘンドリーって名前だぜ」 「なっ、しゃべれるのか」
目を白黒むき出して、驚きを隠せないグレープであったが、そこは百戦錬磨の兵。
ノーグやカタナほどの驚きは見せなかった。
「そう、変な鳥さん。変な鳥さんって言うんだよ」
と、ジョグの鶏冠をなでながら、グレープに話しかけるフィズリー。
「変なトリ?」 「ヘンドリーです。お嬢さん」
「まあまあ、良いじゃないか。トリさん」 「トリさん、トリさん」
「良いわけないでしょう。犬族の戦士、白柴のヘンドリーって言う立派な名前があるんですから」
「トリさん、トリさん」 「お嬢ちゃん……あのね」
「まぁ、トリさんは置いといて」 「………」
「ゼファー、紹介するよ。こちらが今回のモザーク自警団のリーダーのパース、娘さんのグレープそして、俺の甥っ子のパース。3人は、からくりの技術に興味があるそうだ」
「そんで、こっちがゼファー。女の子がフィズリーだ 」
「フーン、イメージ通りの人だ。白い髪に白い髭、白衣を着込んだマッドサイエンティストって感じかな」
グレープは心の内を隠さず、堂々と言い切った。以前、ノーグがゼファーのことを評した台詞と同じである。
(わし、この小娘は嫌い)と、内心思うゼファーである。
「ゼファー、からくり人形についてなんだが、あれはモザークには無い代物だからな、興味がある」
「あれは1000年前の装置じゃよ。人間のサポートをするために作られた代物じゃ」
「1000年前か……とてつもない文明だったんだな」
「あぁ、崩壊したがな」
「そんな崩壊した世界のからくりを掘り起こして、大丈夫なのか」
「からくりがどうという事より、それを使う人間のほうに問題があったんじゃろうて」
「からくりは人間が操作せんと、動かんからな」
「からくり人形は、自分の意志で動いているように見えたが」
「あれは基本動作が組み込まれておる。人間の指示で、その動作を選択しているだけじゃ」
「じゃあ、間違った動作を組み込まれていたら、どうなる」
「一応、決まりみたいな物があってな、人間に害をなす行為は組み込まれておらんはずじゃが、そこまで詳しくは、わしも知らん」
「もし、人間に害をなす様な行為が組み込まれておれば、ただ事ではすまんじゃろうな」
「とは言え、イザークの村は発展途上でな、からくり人形をも使わなければ生活が困難になるのじゃ。まだ住人の数も少ないんでな。頼らずにすめば、それはそれで良い事じゃ」
「そうか、モザークは住人の数が多いい、今のやり方で充分潤ってる訳だし、必要ないかも知れんな」
「私は欲しいな。なんか、可愛いじゃない」
「………かわいい?」
パースとゼファーは目を点にしていた。
ゼファーにしてみれば、からくり人形を可愛いと表現されたのは初めてであった。
(ちょっとは、この小娘を好きになっても良いかも)と思うゼファーである。
「ゼファー、さっきはどうやってモンスターを投げ飛ばしたんだ」
鍛冶屋のハンマが声を出した。
「あぁ、あれか。あれはな、これじゃよ」
5人の目の前で、空筒砲を指差しながら答えた。
「これは?」 「空筒砲と言って、圧縮した空気を打ち出す機巧装置じゃよ」
「武器なのか」 「ああ、そうじゃ。わしが作った」
「どうしてこんな物があるなら、前もって教えてくれなかった」
「すまん、忘れてた」 「忘れてたぁー」
「もう30年も前の前に作った装置じゃ。そりゃぁ忘れるわい」
「他にも武器になりそうな、機巧装置はあるのか」 「いや、ここにあるだけじゃ」
「新しく作れるかい。あれは、かなりに戦力になるんだが」
「無理じゃな、こういう石がないと」
ゼファーは5人にライブジェムを見せてやった。
「なんだ、石が光ってるじゃないか」 「そうだ、こういう光る鉱石が必要なんじゃ」
「ちょっと見せて」
グレープがゼファーからライブジェムを受け取る。 窓の外から入る光にかざしながら、鉱石を見る。
「こういうの、私、持ってるわよ。色が違うけどね」
「なんじゃと、持っとるのか」
「あっ、いや、違うかもしれないけど。色違うし」
「どんな色じゃ」
「うすい青よ。青白く光ってるの」
「どこで、手に入れた」
「えっ、えーとね。森よ」
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