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第25回 第3章 からくり人形 その9

ゼファーは機巧(からくり)工房と呼んでいる自宅内の研究室で、ノーグのからくりの最終メンテを終えて、一息ついていた。

コーヒーを飲みながら、玄関を見つめている。

「そろそろ来る頃だろうが、どうなったかな」

ノーグの慌てぶりが目に浮かぶだけに、楽しそうである。

バンンン!!!!

けたたましい音と共に、玄関のドアが勢い良く開いた。

「何だこれは!!」

そこには、頭から血を流し、ぼろぼろになった服をまとった、ノーグが立っていた。

手には2本の小さなからくり装置をぶら下げている。

やっとの事で取り外したのである。

予想通りであったが、ちょっと度を越えていた。にも関わらず、

「おもしろかったか」

と、問いかけた。

「面白い分けないだろう!!」

「突かれるは、蹴られるは、おまけに変態扱いだぞ」

怒り心頭である。無理もない。2羽のにわとりに、ズタボロにされたのだから。

どういう使い方をしたんだかと不思議に思いながらも、ゼファーはカップにコーヒーを注いでノーグに手渡す。

まずは、落ち着かせる為だ。

頭から血を流しながらコーヒーを飲んでる姿は笑えるが、ノーグの手前、口に出来ない。

「なんだありゃ、にわとりがしゃべったのか、このからくりがしゃべったのか」

台所にある薬箱を取りに向かうゼファー。

「動物の声を、人間の言葉に変換するからくりだよ」

タオルと傷薬をノーグに渡した。

「まあ、元はペットの犬猫用に作られたものらしいがな」

「動物医療の観点から、獣医が扱う動物までその幅を広げたそうだ」

手にしたタオルで血をふき取り、傷薬を塗っているノーグ。

「動物の言葉を人間の言葉に替えるのか」

「まっ、そういう事だ」

「じゃあ、ありゃ、スザンヌと和巳がしゃべったと言うのか」

「スザンヌ?和巳?だれ、それ」

「にわとりだよ」

「和巳がよー、俺をノーグと呼んだんだぜ」

「そりゃーノーグをノーグと呼ぶのは当たり前じゃないか。ところで、和巳って誰?」

「だから、チャンボの所のにわとりだって」

ただ、動物も会話をしているんだぞ、という事を知ってもらう為に、体験させたのだが。

まさか動物同士、名前で呼び合っていたなんて、ゼファーも全く知らなかった。

だって、使ったの初めてだもんと心で会話しているゼファー。

「にわとりにもそれぞれ名前があるなら、からくりにもそれぞれ名前があったっていいじゃないか」

「名前がありゃ、にわとりだってお前をノーグって呼ぶんだぞ」

これは良いネタだ、利用しないてはないと考えたゼファーは力説した。

「えっ、…………それを言いたかったのか」

それを素直に受け取るノーグ。

「そうだ」

力強く返事を返すゼファー。

でもそんな事は全く考えていなかった。

都合の良い考え方をしてくれたノーグ様に感謝。

「名前か、そうだな、やっぱり、あった方が、良い、よな」

腕組みをし頭を左に傾け、シンキングポーズ。

これが、ノーグが考えるときの癖。

「良し!決めた!!」

ノーグの決断の瞬間であった。

「コーグってのはどうだ」

ノーグは照れながらも名前を決めた。

「うん、いい名じゃ。今からこやつは、コーグじゃ」

「言語機能も回復しといたからの、これで話せるぞ」

長い道のりではあったが、自分の考えを理解してくれたことに、ゼファーは喜びを感じていた。

「じゃあ、コーグを起動させるぞ」

ゼファーは診療台に座っているからくり人形のスイッチを入れた。

プーーーーーン

高い起動音と共に、ノーグのからくりであるコーグは、徐々に目を開けた。

ノーグは緊張している。

今まで道具としてしか見ていなかったからくり人形に、名前をつけたのだから。

「俺はノーグだ。お前はコーグだ」

片言の言葉にゼファーは笑っている。

それを見たノーグは気を取り戻し、

「いいな、これからはお前をコーグと呼ぶぞ」

その言葉にからくり人形は反応して、言葉を発した。

「ワタシハ、ニンシキバンゴウOMDIS-4649デス。ゴシジヲ、ドウゾ」

コーグには、自身の名前の認識がなかった。

「なっ、お前の名前はコーグだぞ」

一度決めたら、それにこだわる。

それが、男・ノーグである。

「ワタシハ、ニンシキバンゴウOMDIS-4649デス。ゴシジヲ、ドウゾ」

「何を言ってるんだ、お前はコーグだぞ」

諦めが付かない。それが、男・ノーグ。

「ワタシハ、ニンシキバンゴウOMDIS-4649デス。ゴシジヲ、ドウゾ」

「……」

三度も繰り返されれば、さすがに気づいてしまった、男・ノーグ。

「どういうことだ」

ゼファーに詰め寄るノーグであった。

「これは、からくり人形の初期タイプだからな」

後ずさりしながらも迂回をし、コーグを調べるゼファー。

「ゴメン、会話出来ないみたい」

ゼファーは舌を出して、お茶目に言った。

「じじい、なぐるぞ」

もちろん冗談であったが、からくり人形は反応した。

「ジジイ、ナグル。デキマセン。ボウリョクハ、デキマセン」

からくりには、いやロボットにはロボット三原則なる基本原則が組み込まれている。

それを紹介しよう。

第1条   ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。

第2条   ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。ただし、与えられた命令が、第1条に反する場合は、この限りではない。

第3条   ロボットは、前掲第1条および第2条に反する恐れのない限り、自己を守らなければならない。

ただし、ロボット三原則が組み込まれているのは、自意識や判断能力を持つ自立型ロボットに限られている。

「今度な、会話の出来るタイプを探しとくから」

ノーグは不発に終わった感があったが、

「いや、これでいいよ。会話は出来なくとも、こいつはコーグでいい」

一度決めたら、それにこだわる。

それが、男・ノーグである。

今度はコーグにこだわった。

「コーグは連れて帰れるのかな」

「ああ、もう大丈夫だ」

コーグを連れて帰る。この言葉に、ノーグの心の変化を感じた。

名前を付けただけではなく、コーグを只の道具としてしか見ていなかったノーグが、コーグを一個体として認識し始めたという感が伺えるからである。

もう大丈夫だ。この返答は、コーグに対してのものであったが、ノーグの心の変化に対してのゼファーの思いでもあった。

「診療代は後で持ってくるよ」

ゼファーはからくり人形を村人に無償提供しているが、壊れたときの修理代を収入としている。

ノーグは、コーグに近づきじっと顔を眺めていた。

ノーグの姿を見ていたゼファーは、

これでノーグも、からくりに愛情をもって接することが出来るだろう。

欲言えば村の連中も、そうあって欲しい。

しかし、それも時間の問題かもしれん。

何せ、今回のノーグの悩みや行動が、きっと村の連中に伝わっているから。

そう思っていた。ただの希望かもしれないが。

ノーグは、からくりのコーグを診療台から降ろし、玄関のほうへと一緒に歩いていた。

「コーグ、コーグ」

と繰り返し言葉を発していた。

諦めきれず、無理にも覚えさせようとしている。

が、コーグは受け付ける気配がない。

それでも、

「コーグ、コーグ」

と繰り返しながら、ノーグはゼファーの家を後にした。


そのころ、少年とジョグは村にいた。

近くにいたおじいさんに話しかける少年。

「ゼファーはどこにいる」

「ゾフィー?」

手を耳にあてて問い返すおじいさん。

「ゼファー!」

耳が遠いのかと思った少年は、どでかい声で言った。

「そんな奴っあ、いねえ」

ボケてるのかと思った少年は、

「ゼファーだ!ゼファー!いるだろう!」

「イザークの村にはゼファーがいると聞いて、はるばる来たんだ!!」

更にどでかい声で言った。

「イザーク?バカこくでねえ、ここはモザークじゃ」

「なっ、モザーク!?」

「イザークの村は、北に10キロ程行った所じゃ」

ここは、モザークの村。イザークの村ではない。

少年は空を仰ぎ見ながら、

「えー、あのくそ猿が!!!」

少年の声は、むなしく空に響いた。

ゼファーとの出会いは、まだまだ先になりそうだ。
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第24回 第3章 からくり人形 その8

「動物つったって、何にすれば……」

「そうだ、チャンボのにわとりだ!」

頭に浮かんだ動物は、チャンボのにわとりだけだった。

理由は簡単、さっき会ったばかりだ。

ノーグはチャンボの養鶏場へと急いだ。

養鶏場では、チャンボがにわとりに餌を与えている。

「チャンボ、頼みがある。こいつをお前のにわとりに取り付けさせてくれ」

ゼファーから預かった腕時計型の装置をかざして見せた。

「何です、それ」

まじまじと眺めるチャンボ。

「わからん」

「わからんって」

「ゼファーが話してくれない」

「ゼファーさんがらみ?」

ゼファーと聞いて、何だかうれしそうな表情を浮かべるチャンボ。

「そうだ」

「じゃあ、とんでもない物だけど、一応安全って事かな」

チャンボはもう、にやけ顔になっていた。

それもそはず、チャンボのにわとりが大きいのは、ゼファーの改良によるものだ。

ゼファーはからくりもくれたし、養鶏を営むに際し便利な装置もくれた。

チャンボにとってゼファーは、頼りになるナイスガイである。

「どういう解釈してるんだか、まあいい、取り付けても良いんだな」

「良いですよ、2つあるんですね、じゃあ雄鶏と雌鳥の2羽に付けましょう」

チャンボは周りを見渡しながら、

「仲の良い雄鶏と雌鳥がいますから」

チャンボは2羽のにわとりを見つけ、ノーグと一緒に近づいて行った。

「ノーグさんは、おとなしい雌鳥に付けてください」

「私は雄鶏に付けます。ちょっと気性が荒いですから」

「よし、わかった。おとなしくしてくれよー」

ノーグは背後から雌鳥に近づき、そーっと首に装置を取り付けようとする。

コケーコケーコケー

「こら、あばれるな」

無理もない。いきなり背後から現れて、自分の首をつかまれたのだから。

にわとりだって、びっくりする。

メスのにわとりは、バタバタと羽をふるわせてあばれる。

「どこが、おとなしいんだか」

ノーグはにわとりを押さえつける。

ようやく腕時計型のからくり装置を、メスのにわとりの首に取り付けた。

「これでよし」

チャンボを見れば、楽に取り付けられたみたいだ。

あっちの方がおとなしいんじゃないかと思いながらも、装置のスイッチを入れた。

「手間取らせやがって」

そう言いながら、にわとりのお尻を軽くたたいた。

コケーコココココ、コケー!!

けたたましい声でなくメスのにわとり。

ノーグを睨み付けながら雄たけびをあげる。

ジジ…ジジジジジ

その鳴き声に装置が反応した。

メスのにわとり「コケ、コケココこここ、こいつつつつ」

ジジ…ジジジジジ

「何んだ、何が起きてる」

にわとりの鳴き声になっていない。なんか変だ。

「ノーグさん、こっちもおかしな事になってる」

オスのにわとり「グゲッ、グゲッ、グググゲドドどうし…」

オスのにわとりの鳴き声も変だ。

ジジ…ジジジジジ

にわとりの首に巻きつけてある腕時計型の装置の表面が、青く光った。

すると突然、

「こいつー、私のお尻をさわったー!!」

何と、メスのにわとりが人間の言葉を話したのである。

「な!なにーー!!」

びっくり仰天、あんぐり口を開けっ放しのノーグ。

チャンボは言葉が出ない。

メスのにわとり「和巳さーん!!こいつが私のお尻をさわったのぉー!!!」

オスのにわとり「なにー!!こらノーグ!!俺のスザンヌに何てことしやがるんだ!!!」

オスのにわとりも人間の言葉を話した。

「な?な?なんだぁぅあーーー???」

何が起きたのか理解できていないノーグが慌てふためく。

「に、にわとりがしゃべった」

ゼファーがらみと分かった時点で、何かあると思っていたチャンボは、比較的状況を捉えているようである。

オスのにわとり「にわとりだとおー、俺達には和巳とスザンヌつう名前があんだよ、チャンボ!!」

「和巳とスザンヌ?」

にわとりにも人間みたいに名前で呼ぶ習慣があるのか、いやそれより、人間の名前じゃないかと思うチャンボである。

スザンヌ「みんな来てー!!こいつ痴漢よぉ!!」

にわとりのスザンヌの声に、近くにいた人々やにわとりまでもが寄って来た。

どうやら、人間にもにわとりにもスザンヌの声は届いているらしい。

コケッ、コココココケッ

「どうした、なにがあった」

複数のにわとりと村の人々で、ノーグとチャンボの周りは騒々しくなっていった。

ノーグはオスのにわとり和巳に、くちばしで頭をコツコツ突かれている。

「なんだ、あれ」

近寄ってきた村人が、ノーグのさまを見て口にした。

「どうやら、ノーグが痴漢したらしいの」

スザンヌ「変態よ、変態!!」

にわとりのスザンヌは、ノーグの顔にくちばしを寄せて話す。

「な、人聞きの悪いことをいうな」

ズドーーーーンン!!

ノーグの答えに腹を立てたスザンヌは、足でノーグを蹴飛ばした。

「何するんだ!!」

スザンヌ「だあーって、あんた私のお尻をさわったじゃない」

羽でバタバタ、ノーグを叩きまくるスザンヌ。

「よ、よせ、やめろ!」

その姿を見ていた村人は、大笑いしていた。

「ハハハ、ノーグがにわとりの尻をさわって、変態扱いされてるらしいぞ」

「何かの芝居か?」

スザンヌ「し・ば・い?事実よ!事実!!」

スザンヌは笑っている村人に向かって、大声で怒鳴った。

「うわっ何だ、にわとりがしゃべってんのか」

スザンヌ「にわとりじゃない!私はスザンヌよ!!」

驚きまくる村の住人。

他のにわとりはバタバタと走り回っている。

コケコケコケコケ、コケコッコー!

複数のにわとりが鳴き声を上げているが、何を言ってるのかは理解できない。

ノーグはまだ、オスのにわとり和巳に頭を突かれ、蹴られて転がり散々な目にあっている。

「痛い!痛い!」

「ぐわー、やめろ!!」

ノーグの有り様を見て、何とか和巳をおとなしくさせようと奮闘するチャンボ。

「こらっ!チャンボ!!どうにかしろ!!!」

「そんなこと言われたって、どうすりゃ良いんです」

「お前が考えろ!!」

「………とにかくノーグさん、にわとりに謝って下さい!」

「にわとりに、謝る?」

「何バカなこと言ってんだ」

にわとりに謝るなんて、そんな馬鹿な話があるもんかと思っている。

人間主体で考えれば、当然のことだろう。

スザンヌ「スザンヌと和巳だってばぁ」

にわとりのスザンヌは、チャンボの顔にくちばしを近づけて怒鳴る。

「スザンヌ?和巳?にわとりだろう?馬鹿言ってんじゃない」

と、村人が口にした途端、スザンヌが村人に対して羽をバタバタさせながら、くちばし攻撃を行った。

「痛い、痛い、やめてくれー」

大勢の村人が攻撃を受けて、逃げ回った。

「ノーグ、何でも良い。とにかく謝ってくれーー」

村人達がノーグに向かって叫ぶ。

村人を巻き込んでの一大事に発展してしまった事で、ノーグの腹が決まった。

「スザンヌー、すまん!!」

スザンヌ「スザンヌさんでしょう、さん。それに、和巳さんにも」

何てしつこいんだと思いながらも、

「スザンヌさーーん、和巳さーーん、ごめんなさーーーーーい」

(何で、にわとりに謝ってんだ俺ーーー……)

むなしく、そう思うノーグであった。

第23回 第3話 からくり人形 その7

コケコッコー

一番鶏の鳴き声と共に夜が明けた。

イザークの村では、夜の間ずっと風が吹いている。

これが不思議な風で、村の外周部をぐるりと囲むように吹いている。

この風を利用して、ゼファーは風車小屋を立てた。

夜の間、風車が回り、それを電気変換し村で使っている。

その風車が次第に回転を緩めっていった。

日の出と共に、風が収まってきたのである。

その頃、ノーグは家族と共に畑にいた。

農家の朝は早い。

太陽が昇りきる前に、野菜を収穫しなければいけない。

みずみずしさを残した状態で、収穫できるからである。

奥さんのマカ、次男坊のタネン、娘のナエ、それとノーグの母のクワ、一家総出で収穫に励む。

長男のツーチはもう独立し、自分の畑で収穫を行っていた。

5人での収穫はきつい。

やっぱり、からくりがいないと作業がはかどらない。

からくりは、人間の5人分相当は働いてくれる。

作業効率が半減していることになる。

だが、そのからくりは今日、修理を終える。

「ノーグ、本当にからくりに名前をつける気なの?」

奥さんのマカがノーグに尋ねた。

「いや、まぁ……、どうしようかな」

「私は嫌よ、変人扱いされちゃう」

昨日の夜、からくりの名前について、家族会議を開いた。

結果は、村人と同じで散々な言われようだったが、ノーグはまだ考えている。

太陽が昇り、朝日が強くなった来た頃、ノーグ一家は仕事を終えた。

収穫した野菜はマカと母のクワが、八百屋のレスタの店へ持ち込み、販売する。

その間、ノーグは収穫したうちのケコの実を集め、大きな袋に詰め込み肩に担いだ。

養鶏を営むチャンボの家に行くつもりだ。

これが、なかなか重い。

ぎっしり詰め込んだせいもあるが、実自体が重いのだ。

2.3粒も飲めば腹は膨れるし、栄養価も結構よい。たが、人が食うには硬すぎる。

ケコの実はチャンボが飼っている鶏の餌となる。

チャンボが飼っている鶏は、大きい。

ダチョウぐらいの大きさはある。したがって卵も大きい。

コケの実と鶏の卵を物々交換する。

「おはようチャンボ。コケの実を持ってきたぞ」

「やあ、ノーグさん。いつもいつも助かるよ」

「何言ってんだ、卵のためだよ」

「用意してました。産みたてですよ」

ノーグはコケの実を渡し、鶏の大きな卵2個と交換した。

卵は2個あれば充分な量である。

ノーグは卵を自宅へと持ち帰った。

1個は家族のため、もう1個は長男ツーチの家族のためだ。

ノーグは一息つくと、からくりの仕上がり具合が気になりだした。

収穫を終えた今、取り急ぎの用はないので、ゼファーの自宅へ行くことにした。

その頃ゼファーは小さな装置をいじっていた。

「良し良し、これをノーグに使わせれば。シッ、シッ、シッ、楽しみじゃ」

「慌てふためくじゃろうなぁ」

そうこう独り言を言ってるうちに、ノーグがやって来た。

「おはよう、ゼファー。俺のからくり直ったかい」

ノーグは俺のからくりと言った。

まだ、名前を付けることにためらいを持っている。

ゼファーはそう思った。

(やはり、このからくり(小さな装置)を使わそう)

「いやまだじゃ、あと1時間ぐらいはかかるぞ」

「そうか、ふんじゃ待ってるよ」

「実はの。面白いからくりを用意したぞ」

ゼファーは小さな装置をノーグに渡した。

「なんだこれ」

腕時計の形をした小さな装置であった。ただベルトは長い。

「まっ、使ってみたらわかるぞ」

「どうやって使うんだ」

「そいつをな、動物の首に付けてみろ」

「付けたらどうなるんだ」

「だから、使ったら分かるつーの。付けたら、このスイッチを押す」

「ヒントぐらい教えろよ」

「いいから、さっさと行ってこい」

ノーグは、ゼファーに追い出されるように風車小屋を離れた。

「良し良し、これで良し。さあ、どうなるかなノーグちゃん」

ゼファーは愉快そうに、窓越しでノーグの姿を眺めていた。

第22回 第3章 からくり人形 その6

「やっぱりからくりに名前なんて、おかしいよな」

「………」

そうは言っても、やっぱりゼファーの言葉は頭に残る。

気がついたらノーグは、村のみんなに聞いて回っていた。

しかし、誰もがノーグを笑う。

大工のトンカもそうであったし、果物屋のツールフもそうであった。

養鶏を営むチャンボもそうであったし、靴屋のスニカもそうであった。

皆、ノーグを笑う。

だが、服屋のジャンパの店に立ち寄った時だった。

ここでもノーグはジャンパに問う。

「お前、からくりに名前を付けているか」と。

だが答えはもう分かっている。

さんざん言われたから。

「……………」

しかしジャンパは何も答えない。

皆と反応が違う。

「うーん」

ジャンパは少し考えるような仕草をしながら、ノーグを見る。

「どうしたんだ、いきなり」

ノーグは、ゼファーとのやり取りを話して聞かせた。

「そうか名前ねえ」

ジャンパは、まだ考え込んでいる。

「それで、……名前を付けるのかい」

「うーーーん」

今度はノーグが考え込んだ。

それを見ていたジャンパが、小声で言う。

「実はな………おれな………、からくりに名前付けてんだ」

えーーーーー!!!!

「バ!バカ!!でかい声出すなよ!!!」

ノーグは予想外の言葉に、ただ只驚いた。

ジャンパは服屋を営んでいるせいもあってか、見た目は派手で、性格はチャラチャラしている。

こいつが一番だめだろうと思っていた程だ。

それゆえに、ジャンパの言葉は衝撃だった。

「それで、それでなんて名前にしたんだ」

「スカー」

「スカー!!!」

「だから、声がでかいちゅうのー!!!」

服屋のジャンパのからくりは、細身で女性型のロボットである。

ある程度、人間の言語を理解し、それに返答することが出来る。

店での接客には申し分ない機能を備えていた。

その為か、からくりスカーには服さえ着せているし、会話も試みている。

皆からしてみれば、商売のためだと思われているだろうが、ほとんど趣味の世界であった。

一方、ノーグのからくりは初期型のロボットであり、言語機能を備えてはいるが、その機能は停止していた。

その為か、ノーグは農耕器具のひとつといわんばかりに、からくりを酷使している。

壊れたら修理すれば良い、ぐらいにしか考えていなかった。

その機能の違いが、名前を付けるという行為や取り扱いに、違いが出てきたのではないだろうか。

「いい名前だろう、って言うか、俺のことはどうでも良いだろう」

「ノーグ、あんたどうする気なんだ」

「いや……俺は……、みんな、どうしてるかで決めようかなぁなんて」

「みんなはみんな、あんたはあんただろう、自分自身の心で決めなよ」

「うーーーーん………」

「そんなに考え込む事かね、ただ名前付けるだけなのに」

ノーグにとって、からくりは道具のひとつ。

ゼファーやジャンパのように、からくりに対する感情はない。

それでもゼファーやジャンパのように、からくりに対する接し方を考え始めた。

「内緒なんだがな、羊飼いのメーや八百屋のレスタも名前付けてんだぜ」

「レスタがぁ、あんなごつい奴がか、それにメーは付けてないって言ってたぜ」

「名前付けんのに体格は関係ないだろう、それにメーだって、おおぴっらには言えないだろうし」

「そうか、名前付けてんの他にもいるのか」

「ノーグ、あんたもやってみろよ。意外と楽しいぜ」

ノーグは、少し気分が晴れたような思いを感じていた。

だが、じっくり考えてみたいし、ノーグの家族がなんと言うのかも気になった。

服屋のジャンバの店を離れたノーグは、やっぱり立ち止まりながらも考え込んでいた。

そして、ゆっくりと自宅へ戻って行った。

時はもう、夕方になっていた。

ノーグは一日中、からくりの名前に付いて村人に聞いて回っていた。




第21回 第3章 からくり人形 その5

「うーん、名前かぁ」

「人形だろう………」

ノーグは考え込みながら、村の中を歩いていた。

からくりに名前を付けろといわれても、自分の子に名をつけた時のようには、いかない。

「からくりとは言え、一緒に生活してる様なもんだしなぁ」

止まっては腕組みをし、深く考える。歩いては、また止まる。

それの繰り返しで、なかなか前に進まない。

「よぉー、ノーグ。どうした、やぁーけに考え込んじまってるじゃねえか」

「病気か」

ぶっきらぼうな口調で話しかけてきた者がいる。

鍛冶屋のハンマだ。ノーグの幼馴染である。

口は悪いが気の聞く良い奴である。

ノーグは、その鍛冶屋のハンマの店先で立ち止まっていた。

普段の陽気なノーグが、考え込んでいる姿が気になったらしい。

ノーグは声が聞こえた方向に、顔をゆっくり向けた。

鍛冶屋のハンマの店にも、からくりはいる。

ノーグはハンマの顔をまじまじと見、ずんずんと近づいていく。

その顔は怖い。

「なんだ!なんだ!!なんだあー!!!」

ハンマはおもわず後ろに退いた。

ドン!!

店先のカウンターを思いっ切り手でたたいたノーグ。

更に驚き、後ろに跳ねるハンマ。

「ハンマ!!」

「ハッ…ハイ」

ノーグのあまりの形相とどでかい声に、思わず声を返した。

(俺か?俺が何かしたのか?)

という思いが頭に巡ったが、何も覚えがない。

「お前、からくりに名前をつけてるか?」

「………」

今度は言葉を返せない。

ハンマには、ノーグが何を言っているのか、わからない。

「名前?付けるわけないだろう、何言ってんだ」

思ったとおりの答であった。

イザークの村には、からくりに名前を付けて呼ぶ習慣はない。

ハンマの対応は、ごく自然であった。

ノーグはハンマに、ゼファーとのやり取りを語り始めた。

ヒッ、ヒッ、ヒッ、ヒッ、ヒッ

ハンマは下を向いて笑いを堪えていたが、次第に大きな声で笑い出してしまった。

「ノーグ、ヒッヒッ、そりゃあ、お前、ヒッヒッ、ゼファーのおっさんに、ヒッヒッ、からかわれてんだよ」

言葉の合間に、笑いを堪えながら話していた。

「お、おっ、俺も、そう思ったけど……」

「でも考えてみりゃあ、うなづける所もあってよぉ」

ノーグは弁解するかのように話す。

「ノーグお前、おっさんの病気が移っちまったのか?」

ハンマはもう、笑ってる場合ではなくなった。

ノーグの変わりように違和感を感じ、じっと顔を覗き込んだ。

「病気?そんなんじゃねえよ!!」

恥ずかしさのためか、そう言うと鍛冶屋のハンマの店を、急ぐように離れていった。


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