Category | 04 フィズリーの種

フィズリーが眠りについてから、数時が流れた。
外は相変わらず、風が吹いている。
フィズリーの部屋のランタンは、すでに灯火を落としており、あたりは暗い。
その暗い部屋に、ひとつの小さな光が浮かび上がった。
その光は、次第に大きくなっていき、部屋を照らしていく。
そして、部屋全体が明るくなった。
その明るい光は、なんとフィズリーが発していた。
フィズリーの体全体が、ほのかに光を発していたのだ。
しかもフィズリーは、スーッと宙に浮かんでいく。
当の本人は寝ているようだ。
スヤスヤと。
宙に浮かび上がったフィズリーの体は、大きく発光しだした。
そしてさらに、フィズリーの胸の辺りから、真上に伸びるかのように、光の柱が出きた。
その光の柱はフィズリーの体から離れ、ピンポン玉の大きさで球状に丸まっていく。
次第に丸く丸く、丸くなっていくと共に青白くなっていく。
今度は、その青白い光の玉は、フィズリーの光を取り込むようにして大きくなっていき、やがて色を増していき、
バスケットボールぐらいの大きな青い光の玉へとなった。
その青い大きな光の玉は、かなり部屋を照らすほど輝いていた。
が、フィズリーは目を覚ます事無く、相変わらずスヤスヤと寝ている。
そして青い光の中に、十個ほどのビー玉程度の小さな白い玉が生まれた。
白い玉は、周りの光を吸収するかのように少しづつ大きくなり、やがて青く大きな玉の外に飛び出し、周囲を回りだす。
太陽の周りに存在する、惑星のごとく。
十個の白い玉は、青い大きな玉の光を吸収していく。
青い大きな光の玉は、徐々に小さくなっていく。
白い光の玉は、ピンポン玉ぐらいの大きさになるが、それ以上大きくなることはなかった。
白い光の玉は、どんどん青い光の玉を吸収していき、その密度を増していく。
そして白かった玉は、黄色になり茶色になり、どんどん色が濃くなっていく。
濃くなっていくと共に、光は収まっていく。
光が完全になくなり、その玉は何かを形作ったようだ。
茶褐色の芋状の物体だった。
青かった大きい玉は徐々に青白くなり、少しづつ小さくなっていった。
そして、その青白い玉がテニスボールぐらいになると、フィズリーの胸の中にすっと吸い込まれていった。
フィズリーの発していた光も徐々に消えていき、静かにベッドへと戻っていった。
光のたまにより形成された物体も、共にベッドの上へと落ちていく。
そして周りは、また暗くなっていた。
外ではまだ、ヒュー・ヒューと、風が泣くように吹いている。
第4話 フィズリーの種 完
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「おじいちゃん。フィズ、もう寝るね」
フィズリーは目をこすりながら、あくびをしている。
ゼファーは、テーブルに灯してあったランタンの灯火を、フィズリーのランタンに移してやった。
「風邪引くなよ」
そう言うと、作業台でからくりの部品を取り出し、使えそうな物を調べ始めた。
フィズリーはランタンを手にとる、
「おやすみ」
と、ゼファーに声をかけ、2階にある自分の部屋へと階段を上る。
凄い眠気ではあったが、バタンバタンと鳴る風車の音に合わせるように、一段一段、上っていく。
ようやく部屋にたどり着くと、ランタンをテーブルの上に置き、来ていたドレスをズルッズルッと落とすように、一気に脱ぎ捨てた。
そして、ベッドに置いてあるパジャマを着ると、そのまま潜り込んだ。
「チューリップかあ、見てみたいな」
今日も花を夢見て、眠りについた。
そのころ少年とジョグは、まだモザークの村にいた。
鍛冶屋のおっちゃんの家に滞在していたのだ。
新しい剣を手に入れる為に。
それについては、少年とジョグの昼間の出来事を話さなければならない。
今日は朝から何も食べていない。
サンドワームに追いかけられ、グラモンを追いかけ、巨人に追いかけられ、走りっぱなしであった。
そのうえ食料は、すべてグラモンに食べつくされたのか、何もなかった。
モザークの村に飯屋はないかと歩いていたら、鍛冶屋があり、店頭に剣が並べてあった。
少年の剣は、アルマジロンとの戦いで刃こぼれして使えなくなっていた。
新しい剣が欲しい。
「おっちゃん、その剣をくれ」
指をさし、剣を求めた。その姿は戦士らしい、堂々たるものであった。
「剣!?バカ言ってんじゃねえ。こりゃあ、包丁だぜ」
鍛冶屋のおっちゃんが答えた。
背が高くかっこよくて、いかにも正義の味方といえる体格で、一目でこいつは出来る仕事人だと思わせる、鋭い眼光の持ち主であった。
おっちゃんは、包丁と剣を間違えている少年を笑った。
「包丁!?」
すっとんきょんな顔で答える少年。
その顔を見上げるジョグ。
「何だ、知らんのか。野菜をなあ、こう、トントンと切る道具だ」
包丁の使い方を、仕草で見せてやった。
「うんなこたぁー知ってるわ!!でも、 これ包丁??」
「そうともさ。おめぇさん、いったい剣で何をするつもりなんでぃ」
良くぞ聞いてくれましたとばかりに、いきさつを語り始めた少年。
自分とジョグが、いかにモンスターと戦ってきたか、いかに多くのモンスターを倒してきたか、講談師きどりで大げさに話す。
語り終える頃には、腕組みをしながらウンウンと頷く鍛冶屋のおっちゃん。
「ようするにだな。おめえさん、その包丁でモンスターをさばいて食ったと。そういう事だな」
「何?」
「いわゆる、モンスター料理人てぇーわけだな」
「違ーーーう、戦士だ!戦士!!」
「戦士!?」
「戦士が包丁もって戦うか!?」
「戦士ってのはな、名がある大きな剣で、並みのモンスターなら一刀両断に切り捨てる。そういうもんだ」
違うような気もするが、このモザークの村では窃盗団やモンスターの対抗手段として、自警団が組織されていた。
その自警団の戦士は、自分の体ほどの大きい剣を所持していた。
その剣を作っているのが、鍛冶屋のおっちゃんだ。
名のある剣とは、おっちゃんが作った剣。と、少年は思っていた。
「よーし、俺がおめぇさんにふさわしい戦士の剣を、こしらえてやるぜ」
「必殺の剣をな」
「明日までに作っとくから、今日は俺ん所に泊まりな。ところで、金ある?」
少年は金貨一枚を出した。
鍛冶屋のおっちゃんは、うれしそうに頷くと、
「俺は鍛冶屋の政、よろしくな」
と言いつつ、必殺の剣を作る為、奥の仕事場に入っていった。
「俺は……、こらっ!人の話を聞けよ!」
少年は名乗る機会を失った。
そういう事で、まだまだ少年と言う呼称は続きます。
少年は、明日出来上がる剣を夢見て、眠りについた。
ジョグは何も作ってもらえず、ふてくされて眠りについた。
さあ、いつになったら、ゼファーに会うのやら。
フィズリーは目をこすりながら、あくびをしている。
ゼファーは、テーブルに灯してあったランタンの灯火を、フィズリーのランタンに移してやった。
「風邪引くなよ」
そう言うと、作業台でからくりの部品を取り出し、使えそうな物を調べ始めた。
フィズリーはランタンを手にとる、
「おやすみ」
と、ゼファーに声をかけ、2階にある自分の部屋へと階段を上る。
凄い眠気ではあったが、バタンバタンと鳴る風車の音に合わせるように、一段一段、上っていく。
ようやく部屋にたどり着くと、ランタンをテーブルの上に置き、来ていたドレスをズルッズルッと落とすように、一気に脱ぎ捨てた。
そして、ベッドに置いてあるパジャマを着ると、そのまま潜り込んだ。
「チューリップかあ、見てみたいな」
今日も花を夢見て、眠りについた。
そのころ少年とジョグは、まだモザークの村にいた。
鍛冶屋のおっちゃんの家に滞在していたのだ。
新しい剣を手に入れる為に。
それについては、少年とジョグの昼間の出来事を話さなければならない。
今日は朝から何も食べていない。
サンドワームに追いかけられ、グラモンを追いかけ、巨人に追いかけられ、走りっぱなしであった。
そのうえ食料は、すべてグラモンに食べつくされたのか、何もなかった。
モザークの村に飯屋はないかと歩いていたら、鍛冶屋があり、店頭に剣が並べてあった。
少年の剣は、アルマジロンとの戦いで刃こぼれして使えなくなっていた。
新しい剣が欲しい。
「おっちゃん、その剣をくれ」
指をさし、剣を求めた。その姿は戦士らしい、堂々たるものであった。
「剣!?バカ言ってんじゃねえ。こりゃあ、包丁だぜ」
鍛冶屋のおっちゃんが答えた。
背が高くかっこよくて、いかにも正義の味方といえる体格で、一目でこいつは出来る仕事人だと思わせる、鋭い眼光の持ち主であった。
おっちゃんは、包丁と剣を間違えている少年を笑った。
「包丁!?」
すっとんきょんな顔で答える少年。
その顔を見上げるジョグ。
「何だ、知らんのか。野菜をなあ、こう、トントンと切る道具だ」
包丁の使い方を、仕草で見せてやった。
「うんなこたぁー知ってるわ!!でも、 これ包丁??」
「そうともさ。おめぇさん、いったい剣で何をするつもりなんでぃ」
良くぞ聞いてくれましたとばかりに、いきさつを語り始めた少年。
自分とジョグが、いかにモンスターと戦ってきたか、いかに多くのモンスターを倒してきたか、講談師きどりで大げさに話す。
語り終える頃には、腕組みをしながらウンウンと頷く鍛冶屋のおっちゃん。
「ようするにだな。おめえさん、その包丁でモンスターをさばいて食ったと。そういう事だな」
「何?」
「いわゆる、モンスター料理人てぇーわけだな」
「違ーーーう、戦士だ!戦士!!」
「戦士!?」
「戦士が包丁もって戦うか!?」
「戦士ってのはな、名がある大きな剣で、並みのモンスターなら一刀両断に切り捨てる。そういうもんだ」
違うような気もするが、このモザークの村では窃盗団やモンスターの対抗手段として、自警団が組織されていた。
その自警団の戦士は、自分の体ほどの大きい剣を所持していた。
その剣を作っているのが、鍛冶屋のおっちゃんだ。
名のある剣とは、おっちゃんが作った剣。と、少年は思っていた。
「よーし、俺がおめぇさんにふさわしい戦士の剣を、こしらえてやるぜ」
「必殺の剣をな」
「明日までに作っとくから、今日は俺ん所に泊まりな。ところで、金ある?」
少年は金貨一枚を出した。
鍛冶屋のおっちゃんは、うれしそうに頷くと、
「俺は鍛冶屋の政、よろしくな」
と言いつつ、必殺の剣を作る為、奥の仕事場に入っていった。
「俺は……、こらっ!人の話を聞けよ!」
少年は名乗る機会を失った。
そういう事で、まだまだ少年と言う呼称は続きます。
少年は、明日出来上がる剣を夢見て、眠りについた。
ジョグは何も作ってもらえず、ふてくされて眠りについた。
さあ、いつになったら、ゼファーに会うのやら。
それから少しの時間が流れたが、食事を終えたフィズリーが、ふと呟いた。
「お花、咲かないね」
ゼファーは、ぱたりと食事の手を止めた。
「いっぱい いっぱい お花の種 蒔いてるのに ………」
「全然、芽が出ない」
フィズリーは、目にいっぱいの涙をためていた。
「大丈夫だよ、その内、芽が出て花をいっぱい咲かせるだろうから」
このニーパン大陸はほとんどが砂地である。
木々が生えているが、わずかである。
サンドワームにより土壌改良された地は、いつのまにか大きな森となった。
栄養いっぱいの土壌に、豊富な水資源。
が、どういうわけかモンスターが住み着いていて、人間はおいそれと森の中には入れない。
ノーグの畑はというと、ゼファーにより土壌改良されている。
発掘の際に得た知識がある。そのことについては、後で話してあげよう。
が、フィズリーの種は、そこでも芽を出すことはない。
ゼファーはフィズリーの種を調べたことがあった。
生物学者ではないが、それでも種に異常がない事は分かる。
いったい原因は何なのか、それについては分からないのである。
それでも、フィズリーを悲しませたくなかった。
「ほんと」
フィズリーの顔を見ながら、ゼファーは笑顔で大きく頷いた。
ゼファーの白ひげが、ふわふわと揺れているのを見て、
「うん」
フィズリーも大きく頷いた。
「だが、やっぱりガラクタ山には近づくなよ」
「あそこはな、幽霊が出るからの」
「ゆうれい?」
フィズリーは驚いた。
これは初めて聞くことだった。
ゼファーが言うように、確かにガラクタ山には幽霊が出る。
村人も大勢が、それを確認している。
ガラクタ山は廃棄物を積み上げたゴミ山で、せいぜい4・5メートルぐらいの高さである。
元々瓦礫が積み上がっていた所に、イザーク村開発当初、廃棄物を上積みしただけのゴミ山である。
辺りが暗くなり風が吹き始めると同時に、ガラクタ山の天辺に白い光を発した玉が浮かび上がる。
いや、白い玉が浮かび上がると同時に、風が吹き始めるという村人もいる。
その村人は言う。
「最初はゴミ山の底が光りだす。
その光は徐々に上方へと移動し、頂上に集まる。
やがてその光は、球状になり浮かび上がる。
そして、ガラクタ山から風が吹き始めてイザークの村の外周を回る」
だが、誰も信じるものはいない。
それはそうだ、単なるゴミ山から風が発生してるなんて、そんな事ありえない。
だが、光の玉が浮かび上がっている現状は、皆が目視している。
光の玉は、ガラクタ山の頂上でゆらゆらと揺れている。
その姿を見て、皆は、
「人魂だ、幽霊だ」
と、騒いでいる。
だがその幽霊が、村の人達に害をなしたという報告は聞いていない。
ゼファーは答える。
「そうだ、幽霊だ」
ゼファーはフィズリーを、ガラクタ山に近づかせたくなかった。
自分の理解できない事柄に、フィズリーが巻き込まれることを恐れていた。
風は止む事無く吹いている。
戸は相変わらず、カタカタと音を立てていた。
「お花、咲かないね」
ゼファーは、ぱたりと食事の手を止めた。
「いっぱい いっぱい お花の種 蒔いてるのに ………」
「全然、芽が出ない」
フィズリーは、目にいっぱいの涙をためていた。
「大丈夫だよ、その内、芽が出て花をいっぱい咲かせるだろうから」
このニーパン大陸はほとんどが砂地である。
木々が生えているが、わずかである。
サンドワームにより土壌改良された地は、いつのまにか大きな森となった。
栄養いっぱいの土壌に、豊富な水資源。
が、どういうわけかモンスターが住み着いていて、人間はおいそれと森の中には入れない。
ノーグの畑はというと、ゼファーにより土壌改良されている。
発掘の際に得た知識がある。そのことについては、後で話してあげよう。
が、フィズリーの種は、そこでも芽を出すことはない。
ゼファーはフィズリーの種を調べたことがあった。
生物学者ではないが、それでも種に異常がない事は分かる。
いったい原因は何なのか、それについては分からないのである。
それでも、フィズリーを悲しませたくなかった。
「ほんと」
フィズリーの顔を見ながら、ゼファーは笑顔で大きく頷いた。
ゼファーの白ひげが、ふわふわと揺れているのを見て、
「うん」
フィズリーも大きく頷いた。
「だが、やっぱりガラクタ山には近づくなよ」
「あそこはな、幽霊が出るからの」
「ゆうれい?」
フィズリーは驚いた。
これは初めて聞くことだった。
ゼファーが言うように、確かにガラクタ山には幽霊が出る。
村人も大勢が、それを確認している。
ガラクタ山は廃棄物を積み上げたゴミ山で、せいぜい4・5メートルぐらいの高さである。
元々瓦礫が積み上がっていた所に、イザーク村開発当初、廃棄物を上積みしただけのゴミ山である。
辺りが暗くなり風が吹き始めると同時に、ガラクタ山の天辺に白い光を発した玉が浮かび上がる。
いや、白い玉が浮かび上がると同時に、風が吹き始めるという村人もいる。
その村人は言う。
「最初はゴミ山の底が光りだす。
その光は徐々に上方へと移動し、頂上に集まる。
やがてその光は、球状になり浮かび上がる。
そして、ガラクタ山から風が吹き始めてイザークの村の外周を回る」
だが、誰も信じるものはいない。
それはそうだ、単なるゴミ山から風が発生してるなんて、そんな事ありえない。
だが、光の玉が浮かび上がっている現状は、皆が目視している。
光の玉は、ガラクタ山の頂上でゆらゆらと揺れている。
その姿を見て、皆は、
「人魂だ、幽霊だ」
と、騒いでいる。
だがその幽霊が、村の人達に害をなしたという報告は聞いていない。
ゼファーは答える。
「そうだ、幽霊だ」
ゼファーはフィズリーを、ガラクタ山に近づかせたくなかった。
自分の理解できない事柄に、フィズリーが巻き込まれることを恐れていた。
風は止む事無く吹いている。
戸は相変わらず、カタカタと音を立てていた。
気がつくと辺りには、おいしい臭いが広がっていた。
「フィズ、食事にしようか」
ゼファーは、花の写真を夢中で見ているフィズリーの耳に、口を寄せてささやいた。
フィズリーは植物図鑑から目を離し、テーブルの上を覗くと、そこにはゼファー特製の料理がずらりと並んでいる。
ベーコンキッシュにトマトのファルシ、ポトフや鶏肉のスープもある。
ゼファーはフィズリーが好むものなら何でも作る。
かわいい孫だから。
食卓の中央には、ランプにろうそくが灯されている。
そのローソクの光に照らされてとる食事はなんとも風情がある。
ゼファーの風車小屋では、電気を生むことが出来るのだが、日常の生活には使わない。
風車により作られた電力は、ほとんどがからくり人形の充電装置に使われている。
からくり人形は永久機関ではない。
何日かに一度、充電しなければいけない。
その間隔はからくり人形の性能の差で決まる。
今日も風車は回っている。
その振動と音は、ゼファーとフィズリーの居る住居部分まで聞こえてくる。
ヒュー・ヒュー
外では風が吹いている。
このイザーク村周辺では、薄暗くなると決まって風が吹く。
ろうそくの火が、時折ゆらゆらと揺れる。
隙間風があるらしい。
このイザーク村周辺では、薄暗くなると決まって風が吹く。
戸がカタカタと音を鳴らしている。
「なんか、風さん」
「泣いてるみたい」
フィズリーは、窓の外を眺めた。
「フィズには泣いてるように聞こえるのかい」
ゼファーはフィズリーを見て、そして窓の外を眺めた。
「風はな、わしらを守っておるのだ」
「この風と音でな、外的の侵入を防いでいるのだ」
「わしは、そう思う」
外敵の侵入。
この時代、どこの村でも起きていた。
水と食料は人間が生きる為に、いや、生命を維持する為に必要不可欠なものだ。
それを略奪する者は、やはりいる。
暗がりに乗じて襲ってくることは、良くある事なのである。
その為、多くの村々ではその防衛手段を講じていた。
だが、このイザークの村では、それがなかった。
暗くなると、決まって風が吹く。
それも、イザーク村の外周を崖に沿って。
その風は結構強い。
その為、外敵は侵入出来ない。
だが反面、村人も外には出られない。
が、これは問題ない。
夜、イザークの村から荒野に出る者などいないからである。
風が守ってる。
そう思っても当然であった。
「泣いてるよ」
「たすけてって」
フィズリーはゼファーを見つめ、何か言いたそうだった。が、
「ガラクタ山には、近づいちゃ駄目だぞ」
ゼファーが先に、口を出した。
ガラクタ山。
それは、世界崩壊前の建物の瓦礫や機械類など、今日の世界では使えない物をかき集めた、いわゆるゴミ山である。
イザークの村の住人は、みんなそう呼んでいた。
ゼファーはフィズリーを見据え、さとす様に話を続ける。
「あそこはな、人が近づくと小さな竜巻が起こるんだ」
う~ん
フィズリーはうつむいてしまった。
もう、何度も聞いた話であった。
「フィズは小さいから、吹き飛んでしまうぞ」
たしかにゼファーが言うようにガラクタ山の周りは、昼間でも風が突然発生することがある。
それは、人が近づいたときに起こる。
それも、下から上へ吹き上がる風だった。
大人でも、フワッと浮き上がる時もある。
ゼファーはフィズリーの様子を見ている。
フィズリーはこういう時、いつも同じ質問をする。
「どうして竜巻が起こるの」
そうすると、
「わからん」
と、ゼファーは言う。
これで、いつもの話は終わる。
が、今日は違った。
フィズリーはゼファーに訴えるようにして言う。
「風さん、たすけてって泣いてるよ」
フィズリーはまじまじと見ている。
「助けてと言われてもなあ」
「どうやって風を助けるんだ」
「………」
ゼファーにそう言われたフィズリーは、下を向いて口を閉ざしてしまった。
「フィズ、食事にしようか」
ゼファーは、花の写真を夢中で見ているフィズリーの耳に、口を寄せてささやいた。
フィズリーは植物図鑑から目を離し、テーブルの上を覗くと、そこにはゼファー特製の料理がずらりと並んでいる。
ベーコンキッシュにトマトのファルシ、ポトフや鶏肉のスープもある。
ゼファーはフィズリーが好むものなら何でも作る。
かわいい孫だから。
食卓の中央には、ランプにろうそくが灯されている。
そのローソクの光に照らされてとる食事はなんとも風情がある。
ゼファーの風車小屋では、電気を生むことが出来るのだが、日常の生活には使わない。
風車により作られた電力は、ほとんどがからくり人形の充電装置に使われている。
からくり人形は永久機関ではない。
何日かに一度、充電しなければいけない。
その間隔はからくり人形の性能の差で決まる。
今日も風車は回っている。
その振動と音は、ゼファーとフィズリーの居る住居部分まで聞こえてくる。
ヒュー・ヒュー
外では風が吹いている。
このイザーク村周辺では、薄暗くなると決まって風が吹く。
ろうそくの火が、時折ゆらゆらと揺れる。
隙間風があるらしい。
このイザーク村周辺では、薄暗くなると決まって風が吹く。
戸がカタカタと音を鳴らしている。
「なんか、風さん」
「泣いてるみたい」
フィズリーは、窓の外を眺めた。
「フィズには泣いてるように聞こえるのかい」
ゼファーはフィズリーを見て、そして窓の外を眺めた。
「風はな、わしらを守っておるのだ」
「この風と音でな、外的の侵入を防いでいるのだ」
「わしは、そう思う」
外敵の侵入。
この時代、どこの村でも起きていた。
水と食料は人間が生きる為に、いや、生命を維持する為に必要不可欠なものだ。
それを略奪する者は、やはりいる。
暗がりに乗じて襲ってくることは、良くある事なのである。
その為、多くの村々ではその防衛手段を講じていた。
だが、このイザークの村では、それがなかった。
暗くなると、決まって風が吹く。
それも、イザーク村の外周を崖に沿って。
その風は結構強い。
その為、外敵は侵入出来ない。
だが反面、村人も外には出られない。
が、これは問題ない。
夜、イザークの村から荒野に出る者などいないからである。
風が守ってる。
そう思っても当然であった。
「泣いてるよ」
「たすけてって」
フィズリーはゼファーを見つめ、何か言いたそうだった。が、
「ガラクタ山には、近づいちゃ駄目だぞ」
ゼファーが先に、口を出した。
ガラクタ山。
それは、世界崩壊前の建物の瓦礫や機械類など、今日の世界では使えない物をかき集めた、いわゆるゴミ山である。
イザークの村の住人は、みんなそう呼んでいた。
ゼファーはフィズリーを見据え、さとす様に話を続ける。
「あそこはな、人が近づくと小さな竜巻が起こるんだ」
う~ん
フィズリーはうつむいてしまった。
もう、何度も聞いた話であった。
「フィズは小さいから、吹き飛んでしまうぞ」
たしかにゼファーが言うようにガラクタ山の周りは、昼間でも風が突然発生することがある。
それは、人が近づいたときに起こる。
それも、下から上へ吹き上がる風だった。
大人でも、フワッと浮き上がる時もある。
ゼファーはフィズリーの様子を見ている。
フィズリーはこういう時、いつも同じ質問をする。
「どうして竜巻が起こるの」
そうすると、
「わからん」
と、ゼファーは言う。
これで、いつもの話は終わる。
が、今日は違った。
フィズリーはゼファーに訴えるようにして言う。
「風さん、たすけてって泣いてるよ」
フィズリーはまじまじと見ている。
「助けてと言われてもなあ」
「どうやって風を助けるんだ」
「………」
ゼファーにそう言われたフィズリーは、下を向いて口を閉ざしてしまった。
時は夕方、といっても定かではない。
文明や自然を崩壊させたエネルギー波は、この惑星自体にも多大の影響を及ぼしていた。
地軸がずれ、大気成分も変化し、その為、季節や時間の感覚が失われている。
イザーク村があるニーパン大陸のカタハシ地区は、昼と夜がほぼ同じで時間が存在しており、そのその影響は比較的少ない。
しかし、太陽が昇るから朝、太陽が沈んだから夜、そのぐらいの判断しかない。
その為、便宜上夕方と言っておこう。
「おじいちゃん」
うすい青色の髪の毛をした7・8歳ぐらい女の子が、元気良く入ってきた。
この地には珍しくドレス姿だ。
フィズリーである。
「お花の種、蒔いてきたよ」
今日もフィズリーは、ノーグの畑に花の種を蒔いていた。
芽の出ることのない種を。
「今日も、いっ~ぱい、蒔いたの」
扇状に両手をいっぱいを広げて表現する。
「フィズ、体中砂だらけじゃないか」
村の中も外も、、いやこの大陸全体が砂だらけ。
外に出ると、砂埃になってしまう。
フィズリーは、洋服を叩いて砂を落とした。
「手を洗いなさい」
「はーい」
フィズリーは台所にある水桶に走った。
貯水池はあるが、水道管の設備はない。
そのため水は、毎日ゼファーが池から汲んでくる。
「おじいちゃん、、お花の種を蒔くところ、もうなくなっちゃった」
毎日毎日、花の種を蒔いている。
村の中で蒔ける所は、なくなってしまった。
ノーグの畑にも蒔き終えたらしい。
「そうか、もうそんなに蒔いたのか」
ゼファーは手を洗ってきたフィズリーの頭をなでている。
それでもフィズリーは、花の種を蒔くことをやめる気はない。
イザークの村を花いっぱいにしたい、という夢を持っているから。
それに、まだ一度もフィズリーの花の種は芽を出していないのだから。
「明日はね~」
考え込むような仕草を取り、フィズリーは台所に置いてある、植物図鑑を手に取った。
「どんなお花が良いかなぁ」
パラパラとめくり、花の写真を見だした。
植物図鑑を手にしたら、時間が長い。
ずっと、見ていられる。
ゼファーはというと、相変わらずからくりの修理をしていた。
彼は、イザークの村のがけ下にある洞窟に入り、からくりの発掘をしている。
今日も洞窟に行き、いくつかのからくりを見つけてきた。
蓋を開けてみるまでは、何の装置か分からない。
村にいるからくり人形たちは全部、この洞窟でゼファーが見つけ、発掘し、修理したものである。
イザークの村があるニーパン大陸のカタハシ地区は、千年前をたどると、ロボット産業が特に栄えた地域であった。
中でも、このイザーク周辺は研究施設が多数あった為、よその地域より多くのからくりが眠っているのである。
また研究施設があったため、地下に膨大な水が蓄えられており、イザーク村開発当初、風車での水の汲み上げが可能だったのである。
ゼファーは、それを知っていた。
だから、まだ若いとき自分の故郷を離れて、この地に移り住んできたのである。
外は、すでに暗くなっていた。
「あっ、これ」
ひとつの写真が目に入った。
「チューリップか、いいなあ」
「すごい、かわいい」
「どんな色があるんだろう」
フィズリリーの植物図鑑は、かなり古い。
文字も写真も薄れている。
文字はなんとなく読めるし、花の形もわかる。だが、色までは確認できないようだ。
それでも、花にいろんな色があることは知っている。
ゼファーが教えてくれた。
「赤がいいなあ」
フィズリーは植物図鑑に穴があくほど見つめている。
文明や自然を崩壊させたエネルギー波は、この惑星自体にも多大の影響を及ぼしていた。
地軸がずれ、大気成分も変化し、その為、季節や時間の感覚が失われている。
イザーク村があるニーパン大陸のカタハシ地区は、昼と夜がほぼ同じで時間が存在しており、そのその影響は比較的少ない。
しかし、太陽が昇るから朝、太陽が沈んだから夜、そのぐらいの判断しかない。
その為、便宜上夕方と言っておこう。
「おじいちゃん」
うすい青色の髪の毛をした7・8歳ぐらい女の子が、元気良く入ってきた。
この地には珍しくドレス姿だ。
フィズリーである。
「お花の種、蒔いてきたよ」
今日もフィズリーは、ノーグの畑に花の種を蒔いていた。
芽の出ることのない種を。
「今日も、いっ~ぱい、蒔いたの」
扇状に両手をいっぱいを広げて表現する。
「フィズ、体中砂だらけじゃないか」
村の中も外も、、いやこの大陸全体が砂だらけ。
外に出ると、砂埃になってしまう。
フィズリーは、洋服を叩いて砂を落とした。
「手を洗いなさい」
「はーい」
フィズリーは台所にある水桶に走った。
貯水池はあるが、水道管の設備はない。
そのため水は、毎日ゼファーが池から汲んでくる。
「おじいちゃん、、お花の種を蒔くところ、もうなくなっちゃった」
毎日毎日、花の種を蒔いている。
村の中で蒔ける所は、なくなってしまった。
ノーグの畑にも蒔き終えたらしい。
「そうか、もうそんなに蒔いたのか」
ゼファーは手を洗ってきたフィズリーの頭をなでている。
それでもフィズリーは、花の種を蒔くことをやめる気はない。
イザークの村を花いっぱいにしたい、という夢を持っているから。
それに、まだ一度もフィズリーの花の種は芽を出していないのだから。
「明日はね~」
考え込むような仕草を取り、フィズリーは台所に置いてある、植物図鑑を手に取った。
「どんなお花が良いかなぁ」
パラパラとめくり、花の写真を見だした。
植物図鑑を手にしたら、時間が長い。
ずっと、見ていられる。
ゼファーはというと、相変わらずからくりの修理をしていた。
彼は、イザークの村のがけ下にある洞窟に入り、からくりの発掘をしている。
今日も洞窟に行き、いくつかのからくりを見つけてきた。
蓋を開けてみるまでは、何の装置か分からない。
村にいるからくり人形たちは全部、この洞窟でゼファーが見つけ、発掘し、修理したものである。
イザークの村があるニーパン大陸のカタハシ地区は、千年前をたどると、ロボット産業が特に栄えた地域であった。
中でも、このイザーク周辺は研究施設が多数あった為、よその地域より多くのからくりが眠っているのである。
また研究施設があったため、地下に膨大な水が蓄えられており、イザーク村開発当初、風車での水の汲み上げが可能だったのである。
ゼファーは、それを知っていた。
だから、まだ若いとき自分の故郷を離れて、この地に移り住んできたのである。
外は、すでに暗くなっていた。
「あっ、これ」
ひとつの写真が目に入った。
「チューリップか、いいなあ」
「すごい、かわいい」
「どんな色があるんだろう」
フィズリリーの植物図鑑は、かなり古い。
文字も写真も薄れている。
文字はなんとなく読めるし、花の形もわかる。だが、色までは確認できないようだ。
それでも、花にいろんな色があることは知っている。
ゼファーが教えてくれた。
「赤がいいなあ」
フィズリーは植物図鑑に穴があくほど見つめている。
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