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第25回 第3章 からくり人形 その9

ゼファーは機巧(からくり)工房と呼んでいる自宅内の研究室で、ノーグのからくりの最終メンテを終えて、一息ついていた。

コーヒーを飲みながら、玄関を見つめている。

「そろそろ来る頃だろうが、どうなったかな」

ノーグの慌てぶりが目に浮かぶだけに、楽しそうである。

バンンン!!!!

けたたましい音と共に、玄関のドアが勢い良く開いた。

「何だこれは!!」

そこには、頭から血を流し、ぼろぼろになった服をまとった、ノーグが立っていた。

手には2本の小さなからくり装置をぶら下げている。

やっとの事で取り外したのである。

予想通りであったが、ちょっと度を越えていた。にも関わらず、

「おもしろかったか」

と、問いかけた。

「面白い分けないだろう!!」

「突かれるは、蹴られるは、おまけに変態扱いだぞ」

怒り心頭である。無理もない。2羽のにわとりに、ズタボロにされたのだから。

どういう使い方をしたんだかと不思議に思いながらも、ゼファーはカップにコーヒーを注いでノーグに手渡す。

まずは、落ち着かせる為だ。

頭から血を流しながらコーヒーを飲んでる姿は笑えるが、ノーグの手前、口に出来ない。

「なんだありゃ、にわとりがしゃべったのか、このからくりがしゃべったのか」

台所にある薬箱を取りに向かうゼファー。

「動物の声を、人間の言葉に変換するからくりだよ」

タオルと傷薬をノーグに渡した。

「まあ、元はペットの犬猫用に作られたものらしいがな」

「動物医療の観点から、獣医が扱う動物までその幅を広げたそうだ」

手にしたタオルで血をふき取り、傷薬を塗っているノーグ。

「動物の言葉を人間の言葉に替えるのか」

「まっ、そういう事だ」

「じゃあ、ありゃ、スザンヌと和巳がしゃべったと言うのか」

「スザンヌ?和巳?だれ、それ」

「にわとりだよ」

「和巳がよー、俺をノーグと呼んだんだぜ」

「そりゃーノーグをノーグと呼ぶのは当たり前じゃないか。ところで、和巳って誰?」

「だから、チャンボの所のにわとりだって」

ただ、動物も会話をしているんだぞ、という事を知ってもらう為に、体験させたのだが。

まさか動物同士、名前で呼び合っていたなんて、ゼファーも全く知らなかった。

だって、使ったの初めてだもんと心で会話しているゼファー。

「にわとりにもそれぞれ名前があるなら、からくりにもそれぞれ名前があったっていいじゃないか」

「名前がありゃ、にわとりだってお前をノーグって呼ぶんだぞ」

これは良いネタだ、利用しないてはないと考えたゼファーは力説した。

「えっ、…………それを言いたかったのか」

それを素直に受け取るノーグ。

「そうだ」

力強く返事を返すゼファー。

でもそんな事は全く考えていなかった。

都合の良い考え方をしてくれたノーグ様に感謝。

「名前か、そうだな、やっぱり、あった方が、良い、よな」

腕組みをし頭を左に傾け、シンキングポーズ。

これが、ノーグが考えるときの癖。

「良し!決めた!!」

ノーグの決断の瞬間であった。

「コーグってのはどうだ」

ノーグは照れながらも名前を決めた。

「うん、いい名じゃ。今からこやつは、コーグじゃ」

「言語機能も回復しといたからの、これで話せるぞ」

長い道のりではあったが、自分の考えを理解してくれたことに、ゼファーは喜びを感じていた。

「じゃあ、コーグを起動させるぞ」

ゼファーは診療台に座っているからくり人形のスイッチを入れた。

プーーーーーン

高い起動音と共に、ノーグのからくりであるコーグは、徐々に目を開けた。

ノーグは緊張している。

今まで道具としてしか見ていなかったからくり人形に、名前をつけたのだから。

「俺はノーグだ。お前はコーグだ」

片言の言葉にゼファーは笑っている。

それを見たノーグは気を取り戻し、

「いいな、これからはお前をコーグと呼ぶぞ」

その言葉にからくり人形は反応して、言葉を発した。

「ワタシハ、ニンシキバンゴウOMDIS-4649デス。ゴシジヲ、ドウゾ」

コーグには、自身の名前の認識がなかった。

「なっ、お前の名前はコーグだぞ」

一度決めたら、それにこだわる。

それが、男・ノーグである。

「ワタシハ、ニンシキバンゴウOMDIS-4649デス。ゴシジヲ、ドウゾ」

「何を言ってるんだ、お前はコーグだぞ」

諦めが付かない。それが、男・ノーグ。

「ワタシハ、ニンシキバンゴウOMDIS-4649デス。ゴシジヲ、ドウゾ」

「……」

三度も繰り返されれば、さすがに気づいてしまった、男・ノーグ。

「どういうことだ」

ゼファーに詰め寄るノーグであった。

「これは、からくり人形の初期タイプだからな」

後ずさりしながらも迂回をし、コーグを調べるゼファー。

「ゴメン、会話出来ないみたい」

ゼファーは舌を出して、お茶目に言った。

「じじい、なぐるぞ」

もちろん冗談であったが、からくり人形は反応した。

「ジジイ、ナグル。デキマセン。ボウリョクハ、デキマセン」

からくりには、いやロボットにはロボット三原則なる基本原則が組み込まれている。

それを紹介しよう。

第1条   ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。

第2条   ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。ただし、与えられた命令が、第1条に反する場合は、この限りではない。

第3条   ロボットは、前掲第1条および第2条に反する恐れのない限り、自己を守らなければならない。

ただし、ロボット三原則が組み込まれているのは、自意識や判断能力を持つ自立型ロボットに限られている。

「今度な、会話の出来るタイプを探しとくから」

ノーグは不発に終わった感があったが、

「いや、これでいいよ。会話は出来なくとも、こいつはコーグでいい」

一度決めたら、それにこだわる。

それが、男・ノーグである。

今度はコーグにこだわった。

「コーグは連れて帰れるのかな」

「ああ、もう大丈夫だ」

コーグを連れて帰る。この言葉に、ノーグの心の変化を感じた。

名前を付けただけではなく、コーグを只の道具としてしか見ていなかったノーグが、コーグを一個体として認識し始めたという感が伺えるからである。

もう大丈夫だ。この返答は、コーグに対してのものであったが、ノーグの心の変化に対してのゼファーの思いでもあった。

「診療代は後で持ってくるよ」

ゼファーはからくり人形を村人に無償提供しているが、壊れたときの修理代を収入としている。

ノーグは、コーグに近づきじっと顔を眺めていた。

ノーグの姿を見ていたゼファーは、

これでノーグも、からくりに愛情をもって接することが出来るだろう。

欲言えば村の連中も、そうあって欲しい。

しかし、それも時間の問題かもしれん。

何せ、今回のノーグの悩みや行動が、きっと村の連中に伝わっているから。

そう思っていた。ただの希望かもしれないが。

ノーグは、からくりのコーグを診療台から降ろし、玄関のほうへと一緒に歩いていた。

「コーグ、コーグ」

と繰り返し言葉を発していた。

諦めきれず、無理にも覚えさせようとしている。

が、コーグは受け付ける気配がない。

それでも、

「コーグ、コーグ」

と繰り返しながら、ノーグはゼファーの家を後にした。


そのころ、少年とジョグは村にいた。

近くにいたおじいさんに話しかける少年。

「ゼファーはどこにいる」

「ゾフィー?」

手を耳にあてて問い返すおじいさん。

「ゼファー!」

耳が遠いのかと思った少年は、どでかい声で言った。

「そんな奴っあ、いねえ」

ボケてるのかと思った少年は、

「ゼファーだ!ゼファー!いるだろう!」

「イザークの村にはゼファーがいると聞いて、はるばる来たんだ!!」

更にどでかい声で言った。

「イザーク?バカこくでねえ、ここはモザークじゃ」

「なっ、モザーク!?」

「イザークの村は、北に10キロ程行った所じゃ」

ここは、モザークの村。イザークの村ではない。

少年は空を仰ぎ見ながら、

「えー、あのくそ猿が!!!」

少年の声は、むなしく空に響いた。

ゼファーとの出会いは、まだまだ先になりそうだ。
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Comment
ようこそ、楓さん。
そうです。まだまだ先なんですよ。
実は、少年とジョグは最初の設定では無かったキャラなんですよ。
キャラ誕生の時は軽い気持ちだったんですけど、なかなか評判良いです。
こんにちは♪
3章読み終わりました。
なんだかほのぼのしたいいお話ですね。
ゼファーさんもノーグさんもいい味出してます。
少年葉いよいよ村に着くのかと思ったらまだ先なんですね。
ぴゆうさん
> ロボット三原則、アシモフってすごいことを考えるよね。
> 未来を見ていたのだろうな。

そうですね。
でも、矛盾点もあるらしいです。
実際、ロボットを作ってプログラムしても上手くいかないみたいです。
映画の中でも、4原則とか矛盾点を付いた話とか色々あるみたいですよ。

でも実際、家庭用電化製品にこのコンセプトが生かされているみたいなんですけどね。
危うく主人公を忘れるところだった。

ノーグがコーグか。
のんびりしている村らしいね。
ロボット三原則、アシモフってすごいことを考えるよね。
未来を見ていたのだろうな。

fateもお久しぶりです(^^)
この章は、なんだかとても好きでした。
また、お邪魔いたします。

お久しぶりです
お久しぶりです。10,11月は何かとバタバタしていてあまり来られませんでした。ようやく落ち着いてきたので、これから少しずつ読ませていただきたいと思います。

さて、3章が終わりましたか。
登場人物が増えてきて、この後それぞれがどういう形で出会い関わっていくのかとても楽しみです。
ノーグにはぜひともコーグを大切にしてほしいですね。そして少年のほうは…もう少し時間がかかりそうですね…。

それでは、この先の展開を楽しみにしています。
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